154話
午後一番に、羽ヶ崎君と刈谷と角三君を連れて、さっきの雪国エリアに行ってきた。
刈谷が治して、氷の竜が元気になった所で角三君と羽ヶ崎君がもう一回ボコして、角三君が従えることに成功。
氷の竜にしてみたら何とも迷惑な話だったと思う。わざわざボコされるために治されたっていう。
「きゅるるるる?」
そして、氷の竜はすっかり角三君……と、何故か羽ヶ崎君にも懐いている。
うん、まあ、自分より強い奴に従う本能が働いてるんだろう。
ただ、こう……懐いちゃうと、ただ可愛いだけである。いや、可愛いってよりは綺麗なんだけども。
……あの怖さはどこへいってしまったんだろうか……。
「ところで、この竜、名前は何にするの?」
テラさんに名前つけてあげたんだから、この子にも付けてあげなきゃ可哀相、というか、不便である。
「……氷結界の」
「やめなさい」
うっかりしてると某トレーディングカードゲームのアレの名前を付けられそうだったので阻止した。
「いいじゃん」
「駄目!なんとなく駄目!」
……結局、折衷案っていうことで、氷の竜の名前はシューラさんになった。
シューラさん自身は気に入ったみたいなので、良いって事にしよう。
ちなみに私はブリューナクの方が好みである。
その後は、加鳥の見つけた元凶を回収しに4F南西へ。
……そこでは。
「あっ!舞戸ぉー!」
演劇部の人達がキャンプやってた。お前ら教室はどうした、教室は!
「久しぶりっ!久しぶりっ!」
「ふべらっ」
そして明石にタックル掛けられ、ベアハッグをかけられ、肋骨を折られた。
最早、様式美とも言えよう。私の肋骨はきっと折られるためにあるのだ。うん。悟った。
「舞戸っ!舞戸っ!聞いて聞いてっ!」
そして明石は、人の肋骨をべっきべきに折っておいて、嬉しそうに何かを報告しようとするのである。
「聞くからまずは肋骨を治してください」
「うん!その前に!遂に我々演劇部はっ!4Fの教室を全てっ!回収いたしましたーっ!敬礼っ!」
……それは実にめでたい!めでたいから肋骨!肋骨を!
演劇部に慈悲は無いのか!
肋骨は加鳥に治して貰いました。演劇部に慈悲は無かった。
「そんでねっ?4F南に居た生徒たちも回収しておいたよっ!褒めて褒めてっ!」
演劇部の人達は中々良く働いてくれたようで、4F全体を巡って生徒を探してくれたんだそうだ。
「多分取りこぼしは無いと思うけど、これからも舞戸たちの仕事が終わるまではずっと、4Fじゅう探してるからさっ!」
そしてこのスタンスで明石たちは働いてくれてるので、多分4Fの生徒の取りこぼしは無いんじゃないかと思われる。
元々、4Fエリアは狭い。北棟は3階までだから、南だけしかないんだよね、4F。
それに伴って、渡り廊下の役割を果たす東と西も無いから、実質、1、2、3Fの3分の1の面積しかないのである。
……いや、1Fには体育館エリアがあって、2Fには課外学習棟があるから、それより少ない事になるのか。
……しかし、4Fには割と人がいっぱい残っていた模様。
明石たちが教室と一緒に全員集めて……演劇部員に混ぜていた。
道理でなんか人数が増えてるなあと思ったよ。
まさかここまで溶け込ませてしまうとは……。
「で、元凶は?」
「よく分かんない色した玉んこでしょっ?こっちこっち!」
加鳥が言っていた元凶はどこにあるのか、と思った所、明石が所持しているらしかった。
「触ると力抜けるからさっ?……罰ゲームに使ってるんだよっ」
そして、テントの1つを開けた所、元凶を頭に乗っけられて、ぐったりしている紫藤君がいた。
「でも舞戸たちが要るならあげるよっ!はい!」
そして明石は私の手を引っ掴むと、私の手で元凶を取った。というか、取らせた。
……まあ、力が抜けるんだったら、自分では触りたくないよね、うん。
ただし、今ので、私の肘と肩が脱臼した。
腕の関節外すのはズームパンチする時だけにしていただきたい。
「ちなみに、ここら辺にでっかいモンスターとか、いた?」
元凶ある所にユニークモンスターあり、説は正しいのか?
「でっかいモンスター?いたよっ!でっかいキノコのお化けみたいな奴!」
おー、そりゃ、多分ユニークモンスターだったんだろうなあ。
「なかなか美味しかったよっ!」
食ったんか。
「舞戸が醤油分けてくれたでしょ?焼いてさ、醤油ちょっと垂らしてさぁ……エリンギっぽかったなぁ……じゅるり」
……多分、異世界に落っこちた異世界人は数多かれど、ユニークモンスターを食った奴はそうそうおるまい……。
ということで、今度は戦力を分散させずに皆さんが探索に行きましたよ。
今度は2班に分けて行った模様。回復要員を分散させて挑むんだそうな。
そして私は安定のお留守番……兼、元凶回収係である。
呼ばれたら飛んで行って、元凶を回収して帰る。
なんというか、あれだね。本日の私は元凶ダストボックスみたいな扱いだね。うん。
いや、ゴミ箱っていうよりは、生ごみに入れておくと臭いを押さえます!みたいな便利グッズのような気もする。うん。
留守番がてら、社長に頼まれた事をやっておきましょう。
頼まれたこと、っていうのが、『碧空の種』の増産である。
つまり、土に種を蒔いて、ちょっと気合入れてやると花が咲いて、で、一瞬で枯れて種数粒になる、っていうのを延々と繰り返すだけの簡単なお仕事である。
メイドさん人形達と一緒に楽しく作業してみた。
……こう、一気に大量にやると疲れるんだけども、一気に花が咲くのが綺麗で、見ごたえがあるのだ。
こう、ぶわっ、と、透き通った青い花が咲いて、すぐ枯れて、青い小さな宝石を撒いて散っていく。
すごく綺麗な眺めではあるんだよな。
そして花が咲いた後にばら撒かれる種を全部拾ってだな……。
それをまた蒔いてだな……。
……。
うん、楽しいよ?楽しいよ?
楽しい作業やってたらやっと呼び出しがかかったので、現場へレッツゴー。
現場は3Fである。
3Fはほとんど全部、情報室・新聞部組に任せちゃってたので、私たちはあんまり探索していなかったんだよね。
……まあ、つまり、教室があった場所は全て探索されてた、っていうわけで、探索されていなかったのが3F東にあたる、シューラさんがいた雪原地帯と、西のエリア、あと中央エリアだけだったんだな。
なので、ユニークモンスターについては、情報室・新聞部組に退治されてるのが2体ほどいたらしい。
そして、そいつらと戦ったという付近で、やはり元凶が見つかったのだそうだ。
「じゃあ舞戸さん、回収よろしくお願いします」
「はいよ」
特に感慨も無く、8つ目の元凶を回収。多分、9つ目もさっさと見つかるんだろうなあ……。
戻って晩御飯の仕込みなんぞしていたら、やっぱりあっさりと9つ目も見つかってしまったらしく、また呼び出され、また回収。
次が見つかったら10個の大台に乗るなあ……。
はい、乗りました。乗っちゃいました。祝!元凶2桁!
……3F中央にも湖があり、やっぱり浮島があり、浮島には祠みたいな建造物があり、そこにはやっぱり元凶があり、回収してきました。
うん、呼ばれた時点でそんな気はしてた。
という事で、10個の元凶が集まった所でご飯ですよ。
今晩のご飯は皮をパリッと焼き上げた鶏肉のソテーと、じっくり煮た根菜のポトフ、それからサラダとご飯であります。
鶏肉は炭火で焼きました。余分な脂は落としたかったので。
焼くときにこう、脂が溶けだして落ちるのが何ともいいよね。
脂が炭に落ちた時にこう、ぱっ、と一瞬火が強くなるのとか、その時の脂の焼ける香りとか、もう最高であります。うふふふふふ。これはごはん作る人の役得。
……ちなみに。
この間、元凶はどうしてたか、っていうと……2つは私が装備して、8つは化学講義室に浮かべておきました。
なので全員実験室に集まってる。んで、私が肉焼いてる間にトランプで大富豪やってる。
いいなあ、いいなあ。
ということで、ご飯も終わった。
しかし、今日はまだ終わらない。
大事な大事な、むしろ、これが本日のメインですよ、っていう作業が残っているのである。
……元凶を、消します!
何かあっても対応できる場所がいいよね、という事で、開けた場所に来ています。
具体的には、2F南エリア。だだっ広い草っ原なので、何かあっても大丈夫でしょう、多分。
「勇者の人たちに聞いてきましたが、元凶に『碧空の種』を植える事で元凶を消すんだそうです。簡単ですね」
「簡単なんだったら別に、こんな所に来なくても良かったんじゃない?」
そして、社長は私が大量に増やした『碧空の種』を1つつまんで、元凶の上に乗っけた。
「俺は実際に見るまでは信じません」
そして、社長がそう言うと同時に、元凶から青く透き通った花が芽吹いて咲く。
そして、元凶の、あのよく分からない色の光が渦巻き、咲いた花の青と混ざって、光の奔流となって溢れた。
それは空か海のような色を成して、私達を飲み込む。
不快な感覚では無かった。どこか、懐かしいような、それでいて、何か大切な物を失ったような、酷く切ない感覚。
……海みたいな、空みたいな。
「ぷきゅー」
そして、それが終わった時、よく分からない色の、ぷに、とした、へんな……サッカーボール大の生き物がいた。




