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136話

 ククルツの発掘現場から離れて中心街にまで出てくると、びっくりする程お店だらけである。

 この世界における鉱石って、金属関係だけじゃなくて魔法具としての宝石とか魔石とか言われるものも含まれるんだね。むしろ、そっちの方が重要なのかもしれない。

 羽ヶ崎君お目当ての杖だけじゃなく、色々と変な道具もあったりして見ていて面白い。

 鉱石の中には属性が入ってるような物もある。例えば火属性なら温かかったり熱かったり、質と加工法によっては火を吹いたりもするらしい。

 そういった鉱石を使った道具がこの町の産業を支えているんだそうな。

 ぱっと見た所、鍋置いておくと保温ができる鍋敷きとか、中に入れておいた飲み物を冷たく冷やしてくれる水筒とか、冷蔵庫もどきとか、扇風機もどきとか、そういう家庭用品、日用雑貨みたいな物も多くあった。

 それだけそういうものが生活に根付いてるって事なんだろう。

 ……風属性の鉱石を使ったスティックミキサーみたいな奴はちょっと欲しいかもしれない。


 日用雑貨ばっかり見てると羽ヶ崎君の杖が買えないので、一旦これはストップだ。

 ……結局スティックミキサーは買った。後悔はしていない。これでポタージュとかが滅茶苦茶に作りやすくなったのだ。誰が後悔するだろうか。いや、しない。

「ねえ、舞戸、ちょっと」

 羽ヶ崎君、何やら杖を2本持っていた。

「これ持って」

「何故に」

「いいから」

 そしてその内の1本を押し付けてきたので持つ。

 ……白い球状の石が付いた杖だ。

「……何ぞ」

「ふーん。……返して」

 そして、その杖の球は羽ヶ崎君の手に戻ると、透き通った薄水色に変化した。

「魔力測定器だって」

 ふむ、よく見たら杖に『ご自由にお試しください』って書かれた紙が巻いてあった。いや、異世界語だけど。

「コレで自分の属性調べて杖選ぶらしいよ」

「ほー」

 成程、じゃあ、さっきの色が魔力の属性って事なのかな。

 ……透き通った薄水色は、氷とか水とかっぽい。うん。確かに羽ヶ崎君だね。うん。

 ……私の白はなんだ。白……牛乳……牛乳属性……いやいやいや……。

「で、選んだ」

 そして羽ヶ崎君、薄水色の石が付いてる杖を見せてきた。

 ふむ。前の杖よりも色が明るい。RGBでいけば緑成分がやや強めになった印象。透き通っているのは相変わらずだけど、中で光が妙に屈折するような印象を受ける。うん。ファンタジックだね。

 杖の本体は何やら白い。……いや、違う。

 白いんだけど、これ、違う!霜だ!

 元は金属の銀色してるんだろうに、冷えすぎて霜ついて白くなってるんだ!ひえー!

「それ、手、凍傷にならない?」

 特に君、冷え性だろ?大丈夫なの?それ?

「いや、全然冷たくない。この杖と余程相性いいみたい」

 言いながら羽ヶ崎君は杖から離した手で私の手に触ってきたけど、成程。そこまで冷えてない。いや、元々の体温の差はあるんだけどさ。

 しかし……という事は、相性が良い訳では無い、羽ヶ崎君以外がうっかり触ると手が張り付いて皮膚が剥がれたりするのかね……私は触らんどこ。

「で。……これ、予算オーバーするんだけど」

 ……見たら、うん。金貨500枚、って書いてあった。この町でかなり高級な部類の剣の3倍強。

 この杖はこの店のなかでもかなり高い杖らしい。……まあ、うん。剣よりかなり高いのはしょうがないよね。ファンタジックな云々は。

 でもまあ、相性のいい杖が見つかったんならいいんじゃなかろうか。どうせ他にお金の使い道なんて殆ど無いのだから。

 それに、どうせ私達にはジョージさんという無限資金源がいらっしゃるのだ。うん。お世話になります。


「すみません、これください」

 ということで、カウンターへGO。

 ……なんか、店員さんに凄く驚かれたよ。うん、そりゃ、触るともれなく凍傷の杖だもんね。値段と相まって、まさか買う人が出てくるとは思わなかったらしい。

 だからか、なんか指輪をおまけしてもらった。魔除けの類らしい。割と安いものみたいで、お値段に見合った効果のようだけど、ありがたく頂くことにしましょう。

 ……私が。

 いや、羽ヶ崎君既にステータス上げる指輪装備してるから「これ以上いらない」とのことで私が貰ってしまった。

 うん、でも、家事やる以上指輪は邪魔なんだな、どうするか。

 指輪には小指の爪位のサイズの石が付いてて、そこに放射状に線が伸びる模様が彫ってある。

 ……あれ、この模様、どこかで見たような……あ、あれだ。神殿の服。『神聖加護』の効果が付いてるやつ。

 と、いう事は、この模様に効果がある、って事なんだろうか?でも『刺繍』だと駄目だったんだよね。

 ……謎が深まった。




 しかし、思ったより早く買い物が終わってしまった。……急かしてしまったかもしれない。ごめん。

「で、何買うの、お前は」

「食品関係でなんか面白いのがあればそれと、あとは……強いハタキがあれば」

「ねえよ。何なの、強い『ハタキ』って。矛盾してるでしょそれ」

「ですよね」

 ほんとね、強いハタキがあれば『お掃除』が強化されたりする可能性は大いにあるんだけど……ハタキを強化していった先にあるのは、なんだろう。掃除機?ル○バ?ル○バはメイドの使い魔になったりしないだろうか。加鳥に相談してみよう。

 なんにせよそれは最早ハタキでは無いね。諦めよう。




 ということで食品見に来ました。

 ……見たことの無い果物とか野菜とか売ってるけど、そこまで真新しくは無いかな。

 食品だけで行けばデイチェモールの方が余程発達してたかもしれないね。この町だと買い食いするのは難しいかもしれない。食材を買って帰って作るか、飲食店に入るか、っていう2択なんだろう。

「ということで羽ヶ崎君、何か食べたいものがあったら言ってね」

「特にない」

 あら、そうですか。うん、いつもの事である。期待はしてなかったさ。してなかったとも。

 あ、なんか矢鱈とでかい蕪が売ってる。うん、一抱えはあるね。なんでこの世界の野菜って無駄に巨大化する傾向にあるんだろう。

 じゃあ今日は蕪と鶏肉のポトフとかにしようかね。余った蕪は漬けといてもいいし。

 よし、じゃあ蕪1つ買って帰ろう。

 ……でかいけど、抱えれば持てないことも無い。うん。いけるいける。


 ということで、矢鱈でかい蕪を抱えつつ食品市場を引き続き見ていた所。

「あれ?もしかして羽ヶ崎?」

「……いや、人違」

「羽ヶ崎じゃーん!生きてたー?元気ー?」

 人違い、とか言う間もなく、羽ヶ崎君は手を掴まれてぶんぶん上下に振られていた。

「で、そこの蕪は舞戸ちゃんっしょ?元気ー?相変わらずメイドさん?」

 私は蕪抱えてるので両手ぶんぶんの憂き目には遭わずに済んだ。

「……教室集めはどうなの、穂村」

 はい。そうです。この言葉が通じないかんじの、騒がしい人は穂村君です。

「ん?まー……ちょーっと今、停滞中?っつーか、人命優先?ってことで?」

 ……ほー?




 他の皆さんの集合待ちも兼ねて、近くにあった喫茶店に入った。

 穂村君の行きつけらしい。

 ……行きつけ、という事でご理解いただけると思うが、穂村君、現在この町在住である。

 というか、穂村君他数名の穂村君パーティーは、現在この町を拠点に活動中であるらしい。

「あの溶岩地帯から俺達東に向かったじゃん?そんで、王都のアーギスって所でさー、俺の友達見つけてー、なんか売られてたから金溜めて買い戻したんだよね?」

 あ、そうですか。アーギスというのはここの王都か。そこは奴隷制度バリバリの国らしいね、どうも。

「でー、買い戻したんだけどー、なんか固まってて起きなくて?だから戻さないとじゃん。で、それでー」

「待って。固まってて起きない、って、どういう状況?」

 穂村君の話を遮って羽ヶ崎君が突っ込むと、穂村君は説明に困ったらしく、首を捻り出した。

「んー……とー……あ、うん。植物人間みたいな?ぜんっぜん動かねーの」

 ……それは、まるで死体の様に、という事かね?

 その情報は私も欲しい。もしかしたら命云々の話かもしれないし。

「でー、アーギスって物価高いしどっちかっつーとククルツの方が働き口あるっていうからさー、こっちに来たんだけどさー……」

 ……ここで穂村君、言い淀んだ。

 こいつが言い淀むって事は、相当に厄介な事なんだろうか。

「この町、鉱山の町じゃん。だからさー、採掘する人っていくらいてもいい訳。そこら辺で結構募集とかしてんのよ。でもさ、鉱山って結局危険じゃん?だからさー……そういう所で働く人って、まあ、訳ありみたいでさ?」

 ……よし。読めた。

「こう……ほら、俺達って、この世界で生きてくの大変じゃん?金持ってないし、相場とかも分かんないし?……だからさー、この町が出発点だった子たちはさ、そういう所で働くしかなかったみたいなんだよね?で、俺達今その子たち助けるためにバイト中」

 ……今一つ、前半と後半が繋がらないけど、とりあえずそれ、解決は簡単だ。要は金があればいいんでしょ?

「それ、1人幾らで何人いるの?」

「1人金貨250枚でー……俺達が確認したのは7人?ってとこ?」

 ほー。つまり、金貨1750枚。白金貨にして175枚ね。

 ……結構買い叩かれてるな。

 三浦君と岬さんはもっと高かったぞ。

 まあ、貴族向けに売るのと労働者として売るのじゃ訳が違うのかもね。

「うん、それぐらいなら何とかなると思うよ」

「え!?マジで!?嘘!?もしかして金持ち!?」

 金持ちっていうか、金無限製造器持ちかな。

「え、やばいじゃん!そしたら皆助けてあげられるじゃん!」

 穂村君興奮気味であるが、その前に聞きたいことは山ほどあるぞ。

「しかし、なんでただ鉱山で働くだけで助けるのにお金が必要なのさ。掴まって奴隷にでもされたとか?」

「えー、まさかー。攫った人売るとかないわー」

 穂村君よ、君は笑ってるがあるんだな、それが。ここから南に行くとさ。

 ここに攫われて売られかけたのが一人いるんだぜ?


 しかしここで、穂村君、恐ろしいことに……真顔になって、こう言った。

「……売っちゃったんだって。部員」

 ……は?


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