四
目の前に
苦しむ人がいたら
ぼくは手を差し伸べられるだろうか
いや きっと
出しかけた手を引っ込めて
爪の先を見つめるのだろう
爪の先で
苦しみ続けるその人を
内心でだけ ごめん と呟いて
見捨てるのだろう
自分が
ひどく苦しいときに
ぼくは助けを呼べるだろうか
いや きっと
出せるはずの声を殺して
ただ静かに泣くのだろう
流れる涙に怨みをのせて
哀れなぼくの 人への不信に
自業自得だと
自嘲を見出すのだろう
なにもかも
失ってしまったときに
ぼくは生きていけるだろうか
いや きっと
懐かしさに包まれながら
未練に溺れて死んでしまうだろう
小さな言葉も
大きな感覚も
なにもかもを捨ててしまって
何かを得ようとするために逃げるのだろう
全てを
手に入れたとしたら
ぼくは分け与えることが出来るだろうか
いや きっと
手に入れた途端に
泣いて泣いて泣いて涸れてしまうだろう
自分にそんな資格は無いと
自分にそんな権利は無いと
分けたりせずに
全てを譲るのだろう
寂しすぎる
空虚なココロに
どうか水を
あたたかな水で
ぼくを満たしてください
許しを請いたいのではない
満足したいわけでもない
もういいよ
なんて言われたら
ぼくは崩れてしまうだろう
でも
それならいっそ
貴方のその手で
ぼくをこなごなに
崩してください
跡形もなく
こなごなに
たのむから
忘れて