弐
毎日のように
君の話に耳を傾けるのは
正直言って疲れる
毎日会えるなんて
とても幸せだと思う
メールでも電話でもなくて
君の笑顔に手が届く
会うたび僕は嬉しくなる
幸せをかみしめるように
君の声を聞く
けれど
君の話は
楽しくない
だって
あまりにも楽しげに
嬉しそうに話すんだもの
なのに
そのストーリーに僕は登場しないんだ
つまらないよ
僕は君のヒーローじゃない
コメディアンでもないし
特別印象に残る人間でもないのだろう
今の僕には
何も感動させられないのかもしれない
でも
聞き飽きたんだ
他の誰かとの出来事なんて
どれも似たり寄ったりで
君が話す
すこし稚拙な言葉の
一つ一つが愛しい
言葉を全部
合わせると憎い
羨ましいよ
君をそんな顔にさせる彼らが
君の顔を眺めながら
上の空で相槌を打つ
最近の僕は冷たく見えるかもしれない
しょうがないよ
そうだね
って
言いたくないんだから
よくよく考えれば
本人の目の前で
思い出話をするなんて
何ヶ月も会ってなかったみたいで
寂しいけれど……――
話すのを止めて
不思議そうに僕を見る目は
罪悪感なんて欠片もなくて
逆に少し怒っているみたいで
楽しくないの、私の話?
そんなことないよ
僕は慌てて首を振る
私ね
こうやって話しているときが
やっぱり一番楽しい
ほらね
君はいつも
僕に我侭を言わせてくれないんだ
本心から笑みが溢れて
僕は結局君を許してしまう
誰かに
僕とのことを
そうやって話してくれているのかな
向こうも妬いていればいい
独占欲なんて投げ出してやる
いくらでも聞けばいいさ
つまらない男の話をね
友達以上恋人未満
僕らは今日も
五センチおいて
一方的な会話を
それなりに楽しんでいる