壱
もしも僕が
と始まるストーリーは
浮遊していると思わないか
地に足が着かないというか
悪いとは言わないけれど
現実味が無いというか
掴みどころが無いというか
つまり 信じられないんだ
If は曖昧だ
だから
僕はあまり好きじゃない
たとえ君が好きだとしても
もしも僕が
のっぺらぼうだったら
つるつるのたまごのような
のっぺらぼうだったら
きっと君は
面白い顔をするんだろうね
表情の無い僕とは
対照的な驚愕の顔
いや でも もしかしたら
指を指して笑うのかな
泣いたりするかな
目の無い僕に
見えるかな
もしも僕が
スーパーマンだったら
空も飛べて
かっこよくて
君を助けに
いつでもどこでもすぐにでも
……まさか
正義感の薄い僕に
面倒くさがらずに
そんなことが出来ると思う?
思わないだろう?
良かったよ
君が僕のことを
よく知っていてくれて
もしも僕が
単純で馬鹿だったら
何も考えていなさそうな
駄目で簡単な人間だったら
君は僕を騙すかな
巧妙な嘘をついて
陰で笑うんだろうか
騙されてる僕を
面白いと
見世物にするんだろうか
まぁ
僕は今でも
騙されてあげられる
自信があるのだけれど
もしも僕が
君の恋人だったら
隣でひらひらしてる
君の手を
当たり前のように
握っていいんだろうか
毎日のように
キスをして
毎日のように
好きだといって
毎日のように
手を繋ぐんだろうか
きっと君は
僕が好きだと言っても
くすぐったそうに笑って
猫みたいに逃げてしまうんだろう
もしもの話の中でも
君を捕まえるのは難しい
If は曖昧で
あまり好きじゃないんだ
たとえ君が好きだとしても