懺悔
「皆さん、準備はできましたか?」
きっかり一五分後、イクスを含めた騎士たちは全員廊下にそろっていた。全員が旅に出ていたころの粗末な服でなく、これから一国の主に会うのにふさわしい恰好をしていた。
「それでは行きましょうか」
こわばった笑顔でイクスは全員を案内する。少しくたびれた絨毯、ほのかに香る夕食の匂い、そして締めっぱなしの部屋から香る怪しげな匂い。最後に案内するのはいつもの部屋、ふかふかの椅子に、いつも姫が深く腰掛けていたあの場所である。ここにいる誰もが毎日のように出入りをしてきた場所だ。
「それでは、なかに……」
大きくて重たそうなドアの前に立つと、イクスは深く息を吸った。そして中にいる姫に来訪を知らせるため、ドアを軽く叩こうとした。しかし、
「ちょっと待ってくれ」
そのドアに触れそうな手を掴んだのはナイトだった。誰もが息を飲んでも守る中、それでもナイトは聞き出す。
「イクス……俺たちに何か言いたいことがあったんじゃないのか?」
イクスの腕を握る手に力がこもる。
城の場所が変わっていないにもかかわらず、城から遠い場所に皆が集まった理由を知りたかった。もし、そこに最悪の結果が待っているのだとしても、この扉の向こうにいる人物に会う前に聞きたいとナイトは思った。
その力に気圧されてか、イクスはゆっくりと全員に向き直った。緊張しているのか、顔は青白い。
「……皆さんにはかないませんね。言おうと思ってたんですが、言い出せませんでした」
諦めたようにそこまでいうと、イクスは長く息を吐いた。そして、意を決したように前を見据えた。
「……私は皆さんに言わなければならないことがあります。隠していたこと、話さねばならないようです」
そこからイクスは語り始めた。あの日イクス自身に起こった出来事と、その後何が姫に起こったのかを。