誇り高き女剣士
「遅いな。これほどまでの大遅刻か」
二人が着いた頃には、他の騎士は全てそろっていた。リオン、イクス、レイリーそして、大遅刻をした彼らに自分の剣先を向けている女、ローザ。
「野宿をして、見張りの奴まで一緒に寝こけて寝坊したかのような大遅刻だなぁ!」
ローザの剣はまだ下りない。それどころかどんどんと二人に剣先が近付いていく。
「ちょっと落ち着いてくださいよ。というより、どうして見てきたかのように遅刻の原因がわかるんですか!」
シリルが両手を広げてじりじりと後ろへと下がる。遅刻の原因をそのまま言い当てられてしまった。
「その横を通って来たからな。アホづらかまして眠りこけてるお前らの隣を」
「なら何で起こしてくれなかったんですか!」
そうすれば遅刻なんてせずに済んだのにとシリルは心の中でひそかに抗議する。
「そうすれば遅刻なんてするはずなかったのになぁ」
と、シリルが思っていたことをそのまま口にしたのは、今までその成り行きを、我関せずと当事者でありながら黙ってやり過ごしていたもう一人の男だった。
「ほぉ。見たところ、お前が見張り役だったようだが? ナイト?」
ローザは彼の名前を呼ぶ。それは姫のように優しく呼ぶのではなく、冷たく言い放つような声で。
「いや、お見通しでしたかローザさん」
ナイトと呼ばれた彼はにっこり笑いながらせっせと言い訳を作る。
「いやね、なんか姫に会えるんだなーって考えたらいろんな気持ちがなんかぶわーって吹き返してきて……」
「疲れて寝てしまったと?」
「そんな感じで」
ローザは一度にっこり笑ってから、後ろで引きつった笑みを浮かべているイクスに同意を求めた。
「殺ってしまっていいか? 私がこいつらを永遠の疲れから解放させてやろう」
「えっと……今回は許してあげてください」
人差し指を立てて困ったように首をかしげる。イクスはこのようにして何度かこのローザの暴走を止めてきた。
「まったく……姫も待っていることだ。今回ばかりは許してやろう」
ローザは諦めたようにため息をついて剣を自分の鞘に納めると、周りを見渡した。代わり映えのしないメンツ、しかしやはりどこか違う。よく知っている人物であるはずなのに、なんだか知らない人が目の前に立っているようだった。
リオン、イクス、レイリー、シリル、ナイト、そしてローザ。これで六人。全員そろった。