頭の中の虫と夕焼け
部屋を包み込む夕焼け。オレンジ色の世界に、寂しさと虚しさを感じていた。
僕は、この景色が嫌いだ。何故かと問われると、答えに窮するが、なんとなく、この薄暗いオレンジが不気味な何かを呼び起こしそうで、怖いのだ。
じわりじわりと目から染み入り、頭を支配されていく感覚とでも言えばいいのか、或いは、虫が頭を這い回る感覚とでも言えばいいのか。兎にも角にも、気持ちが悪いのだ。
白で囲われた筈の僕のいる部屋。今は、気持ちが悪い橙色で犯された部屋。叫びたくなった。発狂しそうだった。いや、もう狂っているのかも知れない。だって、ほら、頭からガザゴソって嫌な音がするんだもの。
僕の頭の中で虫が動き回ってる。
頭の中が、どうしようもなく痒い。だけど、掻くことが出来ない。だって、虫は頭の中にいるから。夕焼けからやってきた侵略者は、僕の頭に住み着いた。抵抗したのになあ。こいつが住み着いたら、僕が僕じゃなくなると判っていたから。でま、虫共は勝手に僕の頭に住み着いた。
痒い、頭の中が痒い。
痒い、痒い、痒い……。
ああ、発狂しそうだ。こんなに、痒いのに、虫共を追い払うすべもない。
ただ、意味もなく頭に爪をたて掻き毟るも、頭の中の虫を取り除けない。
助けて、誰か。誰か。
と、部屋の扉が開いた。僕は一瞬身構える。また、虫が来たのか?
「ショウちゃん? お見舞に着たよ」
入って来たのは、よく来る蝶々だった。蝶々は、その漆黒の羽でパタパタと鱗粉を撒き散らしながら僕に近付いてくる。今日はフールツの盛り合わせが入ったバスケットを持っている。蝶々は、僕の人差し指に止まる。人間に慣れている蝶々とか珍しい。そして驚くは、この蝶々が人語を解し、話すことだ。
「やぁ、また着たのか。佳純」
幼なじみと同じ名前の蝶々、羽をひらひらさせて、答えた。照れているように見えた。
「具合はどう?」
「具合? そうだね、頭の虫ががざがさ五月蠅くて、痒いけど、僕自身は至って元気だよ」
蝶々は、指から離れると、どこか儚げに僕の周りをゆっくり旋回する。
それを目で追う。
「そっか、元気なら良かった。早く退院出来ると良いね」
「ああ、どこも悪くないのにね。変だよね。ああ、早く佳純に会いたいな
」
そうつぶやくと、蝶は恥ずかしそうにパタパタと羽ばたいた。
「それじゃあ、また来るね」
「もう帰るの? そう、気をつけてね。猫やカラスや蜘蛛なんかに」
黒いカラスアゲハは、入ってきた同様、独りでに開く扉から
出て行った。
そして、また一人になる。いや、もともと一人か。
ああ、早くみんなに会いたいな。特に家族や佳純に。みんなどうして会いに来ないのかな? 頭の中の虫が、また動き始める。痒い。会いに来るのは虫ばかり。中でもカラスアゲハはどういうわけか、よくやってくる。かならず、何か持って。
僕が好きな物を持って。何故、あの蝶々が僕の好みを把握してるかは知らないが、悪い気はしない。あ、そうか、あの蝶は恩返しをしているのだろう。確かに、猫に襲われ掛けていたカラスアゲハを僕は助けた。そうか、鶴が恩返しをするように、あの蝶々は僕に恩返ししているんだ。ガザゴソガザゴソガザゴソ。虫が動き回る。痒くて仕方ない。
ずっと、夕焼けの世界を眺めつつ、今日はもう眠ろうと思った。
〈End〉
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なんか、なんとなく、病んだ話を書きたくなった。私の頭の中の虫がガザゴソ騒ぐのが、煩わしかったのだ。
とりあえず、精神を病んで総てが虫に見えてしまう青年のお話です。狂った感やら、イっちゃってる感じが出てたらいいなと思う。
しかし、何故こんな話かいたのかしら? ああ、頭の中の虫のせいだね。
感想がこんな駄文にあると思えないが、あったら、宜しくです。




