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ライジング・サーガ ~初心者エルフとチート魔人~  作者: 秋原かざや
第2章 こんなことって、アリですか!? 怒涛の2日目
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SAVE9 二人っきりの時間

 と、思ったんだけど……。

 なかなか寝れなくて。

 セレさんも同じだった。


「早く寝ないといけないんだけどねー」

 セレさんは、苦笑を浮かべた。

 仕方ないと思う。

 だって、私達は、この世界……ライジング・サーガの世界から出れなくなってしまったのだから。

「セレさんの家族は?」

「うん、お父さんとお母さん、それに、妹、かな」

 双子なんだって教えてくれた。

「一度ね、登録してない妹がログインできるか、試したことがあったんだ。ほら、双子だし、もし出来たらレベル上げ頼もうかと思ってたんだ」

「どうだったんですか?」

 ちょっと気になる。

「ん、結果はダメー!」

 腕で大きなバツを作る。

「どこで判別してるのか知らないけど、エラーが出て、ログインできなかったんだ。で、ボクがログインしたらするっと入れた。とっても悔しがってたっけ」

「このゲーム、高いですものね」

 うんと私の言葉にセレさんは頷いた。

「ボクの名前、妹の名前をもじって作ったんだ。妹、せれなっていうから。ボクよりも可愛い名前でちょっと羨ましくって、ね」

「そうだったんですか。……ってことは、セレさんの本当の名前……」

「他の誰にも言わないでね」

 しーっと口元に人差し指を置いて、セレさんは教えてくれた。

「マリア。それがボクのホントの名前」

「マリアさんっていうんですか、すごく可愛いですよ」

「あ、でも、今までどおり、セレって呼んでね! なんだかその、恥ずかしいから」

 ちょっと照れてる?

「はい、わかりました。セレさん」

「ありがとう。なんだかサナちゃんと話せてよかった」

 二人でくすくす笑ってたら。


 とんとん。

 誰かが扉をノックしてきた。

「あ、ボクが出るよ」

 てってってと、セレさんが扉をあける。

「サナちゃん、ラナン君来たよ」

「ふえ?」

 思わず、変な声を上げた。

 さっきまでどっかに行っていたと思っていたのに、もう帰ってきたんだ。

「ボク、ちょっと花摘みに行ってくるね。ごゆっくりー♪」

 と、部屋から出て行っちゃうではないか!

「え、セレさ……」

「ごめん、やっぱ嫌だった?」

「う、ううん……」

 ラナ君の言葉に私は首を横に振った。

「よかった……隣、いいかな?」

「うん」

 私は自分のベッドに座ってた。その隣にラナ君が座る。ちょっと居心地悪そうに。


「……さっき、ラスダン行ってきた」

「まお……ううん、お父さんの所に行ってたんだ」

「思わず、ぶっ倒しちゃったけどね」

 ぷっと吹き出して隣を見ると、ラナ君も笑っていた。

「聞いたら、親父はログアウトしてた。どうやら、親父がログアウトしたのを確認したかのように、その直後に地震が来たらしい。で、確かめてみたら……」

「他の人達がログアウトできなかったんだ」

 そういうことと呟いて、ラナ君は頷いた。

「社員の人達の一部も、ログアウトできなかったんだって。だからすぐに分かったみたいなんだけどね」

「あれ? でもさっき、魔王さま出てきていたよね?」

「ログインしなくても、あれくらいは出来るよ。パソコンでも操作できるから。さっきも言ったように、僕の相手もできるくらいにね」

 そういえば、このゲームを作ったのは、ラナ君のお父さんだったっけ。

「本当に、ごめんね」

「だから、何度も言わせないでよ、ラナ君の所為じゃない」

「だけど……」

 まだ言うラナ君の口を、私の唇がふさいだ。

 重なる唇に、ラナ君は驚いている。

「それに帰れないって決まったわけじゃないしね」

「……そうだね」

 私の手にそっとラナ君は自分の手を重ねた。

「親父が言ってたんだ。もしかしたら、予期せぬバグが生じたのかもしれないって」

「バグ?」

 静かに頷いて、ラナ君は続ける。

「どういう形で出ているのか分からないけれど、そのバグを直したら、ログアウトもできるようになるんじゃないかってね」

 そっと私の頬に触れて、僅かに微笑んだ。

「だから、それを見つけて欲しいって、頼まれた」

「そっか……」

 非常事態だっていうのに、胸の鼓動はバクバク言ってる。

 きっとこれは、ラナ君が、格好いい顔をしてるからだ。

 きっとそう。

「それと同時に、できるだけ、プレイヤーさん達の力になって欲しいって頼まれた。僕くらいレベル上げてるの他に居ないから」

 でも、とラナ君は言う。

「それでも、サナを優先にしたい」

「ラナ君……そ」

「言わないで」

 その白い人差し指で、私の唇にそっと触れた。

「僕がそうしたいんだ。他の人達も大切だけど、一番はサナ……君だよ」

 そういって、頬にキス。

「だから、覚えていて。どんなことがあっても、僕は君を助けに行く。必ず」

「うん……うん……」

 いつの間にか私は泣いてて。

 ラナ君が優しく抱きしめてくれて。

 気が付いたら、眠っていた。

 いつの間に眠ってしまったんだろう。

 きっと、いろいろありすぎたからだ、きっと。


 私も大好きだよ、ラナ君……。 

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