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ライジング・サーガ ~初心者エルフとチート魔人~  作者: 秋原かざや
第2章 こんなことって、アリですか!? 怒涛の2日目
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SAVE8 それって、マジ? ホントですかぁ!?

※ちょっぴり地震が出てきます。苦手な方は、避けてくださいませ。

 それと、今回がっつりシリアス風味です。

 何が起きたのか、わからなかった。

 私達は、楽しく今日一日のハチャメチャ振りを思い返しながら、夕食をとっていた。

 その後は、体を休めるために、ログアウトするだけだったのに。


 ずずううううん……。

 なにやら地響きみたいなのが聞こえた。

「えっと、これ、何? もしかして、これが噂のイベ……」

「サナっ!!」

 かしゃんとラナ君のスプーンが落ちて。

 同時に私はラナ君に抱きしめられて。

 その後すぐ、大きな地震が来た。

 みんなも、急いでテーブルの下に隠れた。

 けれど、収まる気配がない。

「みんな、外へ!!」

 誰の声か良く分からなかった。

 とにかく、みんな、外に飛び出して。折り重なったり、物が落ちたり、そんなことがなかったのは、やはりここが架空の世界だからだろうか。

 この世界を冒険しているPCだけでなく、力を持たない一般の町の人達なNPCまでも不安げに空を見上げている。

 暗い雲が立ち込めていた。今にも雷が鳴って、雨が降り出しそうだった。

 いつの間にか、あの大きな地震が止まっていた。


「ら、ラナ君……これなんていうイベント?」

「違う……」

「え?」

「僕、全部イベントチェックしてるけど、これは違う。イベントじゃない……」

 困惑しているのは、私だけじゃない。ラナ君も、他のみんなも、不安だった。

 嫌な予感ばかりが支配するのは、気のせいだろうか?


 ばちばちっ!!

「いたっ!!」

 今度は何が起きたの? 静電気のでっかいバージョンが、私の体の中を走っていった。

「だ、大丈……夫?」

 どうやら、ラナ君も、他のみんなも同じみたいだった。

「もう、何が起きたの?」

「……わから」

 ラナ君がそう言ったときだった。


 ぴんぽんぱんぽーん!!

 間の抜けたチャイムが鳴ったのは。


『現在、ライジング・サーガに参加しているプレイヤーの諸君。落ち着いて聞いて欲しい』

 現れたのは、この世界に入ったときに初めて会った魔王さんだった。

「親父?」

 ラナ君が小さく呟く。

『君達は、ログアウトができなくなった』


 なんですってぇええええっ!!?


 あっちこっちで悲鳴や叫びが聞こえた。

「どういうことなんだよ!!」

 ラナ君が魔王に向かって叫んだ。

『原因は未だ不明だ。こちらもスタッフをかき集めて、原因を究明し、君たちの帰還のために手を尽くしている。現在、君たちの家族にも連絡を入れているところだ』

 原因不明って、も、もしかして……私達、ずっとここに閉じ込められちゃったんですか!?

『こちらでログイン数は確認している。1536名。それがここに閉じ込められた人数だ』

 少ないのか多いのかよくわからない。

 でも、でも……。

『君達が目覚めるまで、君たちの体に関することは、我々が責任とって、保護する予定だ。その件に関しては安心して欲しい』

 魔王さんは、淡々と告げている。辛そうな顔も憤っている顔もしていない。

 無表情だった。

『ただ……そちらで戦闘不能になると、どうなってしまうかが、わからない』

「えっと、どういう、こと?」

 私は思わず言葉にしていた。思っていたことを素直に。

「ここで死亡というか、HPがゼロになると、どうなるかわからないってこと」

 難しい顔で、側に居たラナ君が教えてくれた。

『なので、プレイヤーの諸君には、なるべく死なないように立ち回ってもらいたい。また、現実の世界で行なってた生活……分かりやすくいえば、食べ物や風呂、睡眠なども、現実世界と同じように対応してもらいたい。これもなるべく空腹にはならないよう、寝不足にもならないように』

 次々と注意が告げられる。

『できるだけ、君達を帰すために尽力を尽くす。だが、万が一に備えて覚悟はしておいてもらいたい。急なことで、酷な事を言うが……そういうことだ。君達の未来に、幸あらんことを』

 一体、何が起きたの?

 どういうことなの?

 悲鳴がまだ聞こえるし、今度は泣き声なんかも聞こえる。

 ……ねえ、もう帰れないって……嘘、でしょ?

 お兄ちゃんたちも、可愛い妹たちにも、お父さんもお母さんも……みんなにもう、会えないの?

 視界が揺れて、音もなく零れた。

 あふれる涙を、止めるすべは持っていなかった。

 ただ、ラナ君が抱きしめてくれた。

 優しく優しく、私の頭を撫でながら。

 落ち着くまで、数時間を要した。


「ありがと、ラナ君」

 顔を上げた。もう、泣いてられない。

 こうなった以上、ここでの生活に慣れなくては。

 涙を拭いて、笑顔を作った。

「どう、いたしまして……」

 少し悲しそうな顔で、ラナ君が微笑んでくれた。

「ラナ君の、せいじゃないよ」

 私は言った。

「でも」

「ここに来たいっていったのは私の意志。だからラナ君のせいじゃない」

 ちゃんと言わないと、ラナ君はきっと。

「だから、自分を責めないで。これは事故なんだから」

「……敵わないな、サナには」

 苦笑してたけど、どこか吹っ切れたような顔をしてる。

「ラナ、これからどうする?」

 アルフさんが声をかけてきた。みんな、顔色が悪い。でも、それでも生きようとしてる。

「いつもの宿屋で部屋を取ろう。慣れた場所の方がいいと思うし」

「そうね、その方がいいわね。寝不足は……美容の敵だし」

 ミスティさんの言葉に、思わず笑ってしまった。

「そうそう、悩むのは後にしよ! 宿屋で寝て、それから考えよう!」

「賛成」

 セレさんもとうさんも頷いた。

 周りで打ちひしがれていた人達も、少しずつ数を減らしていた。

 きっと、私達のように僅かな希望を胸に、決めたのだろう。


 宿屋に部屋を取った。男性陣、女性陣と分けて。ちなみにミスティさんは、男性陣の方に入ってもらってる。

「ごめん、みんな、先に寝ててくれる? 僕、ちょっと野暮用思い出したんだ」

 きっと、魔王さまのところに行くんだと思う。

 ラナ君はそういって、一人で何処かへ行ってしまった。


 こうして、怒涛の二日目が終わった。

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