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ライジング・サーガ ~初心者エルフとチート魔人~  作者: 秋原かざや
第1章 びっくりどっきり、ログイン1日目
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SAVE1 ログインしたら、そこはラスダンで魔王がいました

 気が付いたら、私は薄暗い廊下にいた。

 うん、たぶん、廊下。

 しかも……何故かおどろおどろしい。

 震える手が握るのは、紅い魔石の入ったロッド。

 えっと、マニュアルによると、これは初心者に渡される扱いやすい初心者用ロッド……らしい。

 まあ、振るだけで火の玉が出るらしいから、ちょっと心強い。


 っていうか、何で、初心者の館でなくて、変な廊下にいるのぉぉーーーっ!!


 時間は少し遡る。

「で、僕に話ってなあに?」

 ちょっとのんびりした口調で首をかしげるのは、私の彼氏の浅樹羅那あさぎらな君。

 ちょっぴり大きな黒縁眼鏡をかけていて、僅かに蒼い瞳をしてる。

 癖のある黒髪は、時折緑色に見えるくらい、つやつやなんだけど、ちょっと長さがばらばら。

 でもね、笑顔がすっごく素敵なの。

 私に向けてくれる笑顔が。もちろん、すっごく優しいし♪

 いやいや、今は惚気てる場合じゃない!

「ずっと、ゲームしてて、相手してくれないじゃない!」

「ごめん」

 即答だった。

「だから、私も羅那君のやってるゲーム、やることにした!」

「え? ちょ、ちょっと待って! あれ、ちょっとお金かかるよ?」

 そう、羅那君がプレイしているゲームは、高い。

 なにせ、五感をリアルに感じる画期的なゲーム。その装置だけで、なんと! 驚きの20万円なのだ。

 まあ、それだけ投じれば、タダでゲームに参加できるのだから、安いものだ。

「一部のアイテムやスキル、それにクエストも課金制だし、まだベータ版だし……やめた方が」

「ううん、私も、やるっ!!」

 ちょっと高いけど、羅那君とこうしてしゃべる時間も、かなり削られているのだ。

 そのゲームの所為で。

 だから、ちょっとリアルなゲームの中で、ゲームが楽しめる上に羅那君との時間も増えるのなら、万々歳だ!!

 あ、ちなみに私、ゲーマーです。いや、羅那君には負けるけど(だって、私がプレイした翌日にクリアするってどうよ? 同時に買ってですよ。私もそりゃ、上級者には劣るけど、けど、一応、ゲーマーを名乗っちゃってるから、その、ちょっと凹むよね)RPGは大好きだし、かなりのレーベルをクリアしてる。もちろん、乙女ゲーも好きだけどね。

 だから、羅那君がハマリまくってるゲームが気になってた。

 MMORPGだっていってたし。

 それに、羅那君がいるなら、初めてでも平気だろうって思うの。

「お金はどうするの? その、もし困ってるなら……」

「そこら辺は大丈夫!! 今日、バイトゲットしてきました!!」

 じゃんっと、先日決まったばかりのバーガー屋さんの制服を見せた。可愛いよね、あそこのバーガー屋さんっ!!

「……抜かりないんだ」

「うん! だからその、ちょっと遅れるけど、待ってて欲しいんだ」

 羅那君と一緒にゲームができるのなら、きっときっと楽しいと思うから。

 その後、私は数ヶ月を費やして、やっとこさ、ゲームの資金を手に入れ、晴れて、ログインしたのでしたっ!!


「のはいいけど、ここ、どこなのぉーーーー!!」

 確か、初心者の館には、魔法使いっぽい人が案内してくれるって言ってくれたのに。

 可愛い部屋だから期待してたのに。

 ここは暗くて、じめじめして、怖いよーーーーっ!!


 あ、申し遅れました。

 私、龍崎りゅうざきサナっていいます。高校2年生です。(あ、羅那君は大学1年生です)

 ついでにこのすんごいゲームは、「ライジング・サーガ」略して、ライサガって言うらしいです。

 で、私が選んだキャラは、ハイエルフ。耳が長くて、可愛くて、ある程度歳を取ると、それ以上歳を取らなくなるんだそうです。設定上は17歳。まあ、同年齢ってやつです。あと2歳も歳を取れば、成長が止まるんだよね。ちょっと嬉しいかも。

 あ、名前はサナ。分かりやすいよね。

 んでもって、職業は魔術師。前衛でどんがん叩くのは趣味じゃないので、後ろでどかーんと出来る方を選びました。今はまだ、炎の玉しか出せないけどね。

 で、事前に羅那君と初心者の館の前で待ち合わせということで、キャラを設定して、ログイン……あ、ゲーム上では、これを転生というらしいです。

 してきたんですけど……。


「どう考えても、初心者向きじゃない館ですーーーー!!」

 ううう、怖いよー。

 羅那君、来ないかな?

 なんて思ってたら。

『サナ、どこにいるの!?』

 空から……ううん、頭の中から声が聞こえた。

「羅那君っ!! 羅那君、どこにいるの!? ここ、どこだかわかんないよー!! 羅那君から教えてもらった可愛いお屋敷じゃないし、よくわかんないよー」

『落ち着いて、サナ。もう30分経ってるのに、なかなか初心者の館から出てこないから、心配してたんだ。通話が通じてよかったよ』

 依然、声だけだけど、見知った声がするのは嬉しい。

 ちなみにこれ、事前に羅那君がくれたアイテムなんだ。特定のプレイヤーと会話できる通信機なんだそうだ。なんだっけ、『通話の耳飾り』だったっけ。

「うんうん、変なところにいる。なんかね、おどろおどろしいお屋敷の、廊下にいるの」

『おどろおどろしい、廊下?』

「うん、暗くて血のような絨毯がずっと延びてて……」

『なんとなく、どこにいるのか、わかったような気がする。ねえサナ、近くの壁とかに紋章とかないかな? その紋章の形を教えてくれる?』

 紋章? きょろきょろと辺りを見回す。

 あ、変な印、発見!!

「えっとね、ひし形の形の中にグリフォンみたいなのが書いてある。これかな?」

『!! グリフォンだって!?』

 なんか、場所、わかってくれたかな? すぐに来てくれるのかな?

『サナ、落ち着いて聞いてね。たまに事故があって、転生時に、変なところに飛ばされるときがあるんだ。だから、今、サナは違うところに来てる。ここまではわかるよね?』

「うん」

『それから、もう一つ。サナがいるのは、きっと……ラストダンジョンだと思う』

「うん、ラストダンジョ……ええええっ!!!!?」

『だから、ちょっとそこに行くのに時間が掛かるけど、絶対、助けに行くから』

「うんっ! 早く来てねっ!!」

『サナも出口を目指して、敵に見つからないよう気をつけて』

 うわ、ラストダンジョンだよね? 私、まだレベル1なんですけど!? これって、超ヤバイってやつですか!?

『出口は薔薇のゲートをくぐって、大きな扉を目指して。その大きな扉をくぐれば、まずは大丈夫だから』

「うん、わかった」

『じゃあ、また後でね。なるべく早くそっちに行くからね』

「うん、待ってるっ! 私もがんばる」

 その後、声が聞こえなくなった。

 心細いけど、場所が分かったのなら、後は出るだけだ。

 幸いにも、何故か強そうなモンスターに出会っていない。

 今なら、誰にもあわずに出られそうだ。

 おっと、薔薇に囲まれたゲートを発見っ!

 その奥にかなり巨大な……ちょっと怖そうな扉も発見! っていうか、私の力で開けれるかな?

 いや、開けれるはず!

 出口なら、すぐに開いて……。

 ぎぎぎっと軋む音をあげながら、開いたそこには………。


「よくぞ、ここまでたどり着いたな。勇者よ」


 紅に染まる大きな玉座に座る、でっかい角を付けた、めちゃくちゃ美人で、グラマラスな……どうみたって、ここのボスだよねーって、人がいた。

「あ、あの……私、サナっていいます。あなたは誰ですか?」

 嫌な予感をしつつ、恐る恐る尋ねてみる。


「私は、この城の主、『魔王』だ」


 きゃあああああああ!!

 予感的中!!!

 ら、羅那君、ひっじょーーーにヤバイです。

 プレイ早々、ラストダンジョンに入って、その、『魔王』に出くわしました!!

 私、どうなっちゃうのぉおおおおお!!!

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