捌 「でなきゃ、お前が死ぬ」
木曜日。
僕は高熱を出して倒れた。
ショックのせいかも知れない。まさか、あいつが、瞳が僕を呪っていたなんて。
自分で犯人の最有力候補に入れておいてなんだが、彼女以外の人間で合って欲しかったというのは事実だ。
人間不信になりそうだ。
ドカドカと入って来た琥珀君は、氷枕で寝ている僕のそばまで来てしゃがみ、こう言った。
「それで、呪い返しをしてもいいんだよな?」
「呪い返しをしたら、どうなるんだ?」
僕の返答に、琥珀君は顔をしかめた。
「しなきゃ、お前が死ぬ」
「したら、あいつが死ぬのか?」
「お前を呪った奴だぜ?」
「この呪いを呪い返ししたら、あいつが、死ぬんだな?」
琥珀君は観念したように頷いた。
「この呪いを返すわけだしな。お前と同じ状況に置かれるぜ」
「なら、いいや」
「いいや、じゃねぇだろう」
琥珀君はポケットからしわしわの小さな紙を取り出した。それには、乾いた血で「死ね」とあった。
捻りのない言葉だが、僕はその単語に心臓を握り潰された。
「お前のお守りに入ってた。呪いの言葉だ」
それでも僕の気持は揺るがない。
「お前、死ぬ気か?」
僕は頷く。
「正気じゃねぇな」
「僕は規格外だからね」
「そうかよ」
琥珀君はそう言って、立ち上がる。
「神社は生きてる人間の相手をする場所だ。死人は墓地に行け」
そのまま琥珀君は、僕に背を向けて部屋から出ていく。
「ちょっと、待って」
「なんだよ」
半身を部屋の外に出している琥珀君は顔だけ、こっちに向けた。
「プリクラ、入ってなかった?」
「どこにだよ」
「お守りに」
琥珀君はしばらく、沈黙した。
「どういうことだ?」
琥珀君は再び僕のそばにしゃがみ込んで、そう言った。
「僕はそのお守りに、あいつとのプリクラを入れていたんだ」
「お守りを開けたのか? バチあたりだな」
「君だって開けたじゃん」
「それは……あーもー! 話をズラすなよ」
「これは僕のお守りに違いない。だって、あれは修学旅行の時に、あいつが買ったものだからね」
「だから、なんだよ」
「犯人がプリクラを抜いたんだ」
琥珀君は腕を組んでブツブツを呟く。僕には聞こえない。
「なんでわざわざプリクラを抜いたんだ?」
「それは、気に入らなかったからだよ。琥珀君、真先生に連絡してもらえる?」
「どうするんだよ」
「犯人を見つけるんだ」