碌 「それで呪うか?」
水曜日。
僕とお祓いの格好の琥珀君は僕の学校の図書室にいた。
「よく考えたら、昨日は学校をサボッてたんだな」
「よく考えたら、学校に来るの三、四年ぶりだな」
凍空さんが言っていたが、琥珀君は中退だそうだ。中学を。
「んで、お前を呪いそうな奴はどこにいるんだ?」
「もうメールで呼んでるよ。僕らはこの図書室で待てばいい」
「あっそ。準備がいいんだな」
準備といえば、やらなきゃならないことがある。
僕は適当に、オカルトの本を机の上に並べた。
「何してんだ?」
「プレッシャーをかけようと思って」
「だから、俺にこんな格好をさせてるわけね」
お祓いの服をつまみ、黒く染めた髪を見て、ピアスを失った耳たぶを掻きながら、そう言った。
「確認だけど最初に呼んだのは、田所一。時計マニア。この腕時計を欲しがってるんだ」
「それで呪うか?」
「基本、僕は善良な市民だからね。人に恨まれるなんてほとんどないよ。この腕時計だって、抽選だったわけだし」
「あっそ。二人目は?」
「僕の親友。小倉翼」
「親友って、お前何を考えてるんだよ」
「この前の体育で手を怪我させちゃって。まぁ、突き指だけど。それで、翼は最後の大きな大会に出れなかったんだよ」
「それで呪うか?」
「僕は、こう思うんだ。「本当に効くなんて思ってなかった。ただ憎かったから八つ当たりでやった」。そうじゃなきゃ、こんな強力な呪いを人にかけるかな?」
「そう言われると、そうなのかも知れないな」
「そして、三人目。まぁ、この子が本命なんだけど」
「なんで最後なんだよ」
「できれば、会いたくないんだ」
「あっそ、それでだれだよ」
「黒崎瞳。僕の、元彼女」
「そういうことな」
僕は胸がえぐられる思いだった。あいつを疑うなんて。
「田所一ってアイツじゃないのか? あのきょろきょろしてる奴」
「うん。そうだ。呼んでくるよ」