弐 「僕は規格外だからな」
ぐわんぐわんと揺れる頭で僕は起きた。場所は保健室だった。
「お目覚めだよ」
「寝起きがいいんだな。その台詞は普通、見舞い側が言うもんだぜ」
「僕は規格外だからな」
いい意味でも、もちろん、悪い意味でも。
見舞い人は僕の数少ない友達である小倉翼。その翼が、包帯を巻いている右手で箸を操っていた。
誰かの弁当の卵焼きを口に運びながら、僕に聞いてきた。
「規格外と言えば、なんであんな所に倒れてたんだ? 規格外にも程があるだろ」
「そんなことより、そろそろ僕の名前を呼んでほしいな。僕の名前はまだ、この小説において、出てきてないから」
「俺のクラスメイトの小鳥遊天に何があったんだ?」
さらっと流すところが、翼のいい所だ。
「なんか気持ち悪くなった」
「昼飯を食わないからだろ」
「そうかもな」
たった今、空になった僕の弁当箱を、翼の奴が持っている。
「保健室のセンセーは、今いないから帰ろうぜ」
「いろいろ聞かれたり書かされたりするのは嫌だから、うるさいセンセーが来る前に逃げようってことだね」
「なんで説明口調なんだ?」
「ま、規格外だからかな」
そんなわけで、僕らは帰宅することにした。