表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
霊能力探偵(仮)  作者: 道化師
目次
10/11

拾 「アイツ、馬鹿だぜ」


 日曜日。素晴らしい朝だった。


「アレから、もう一週間だな」

「結局、小鳥遊君は呪い返しをしなかった」

「それでよかったんじゃね? 結果論だけどな」


 俺の部屋で、なぜか親父はお茶を飲んでいた。

 そして、話題に持ち出したのが、アイツのことだった。


「『誰かを殺して生きてしまった。そんな十字架を背負って生きれるほど、僕は強くない』だっけ?」


 気持ちが言葉をさえぎる。

 俺は気持ちを飲み込み、言葉を続ける。


「アイツ、馬鹿だぜ」

「彼は、そんなことを言ってしまったばかりに、大会にも出られず、黒崎ちゃんにも会えない。小倉君の望み通りになったね」

「皮肉にも、な」

「みんな傷ついた。一番傷ついたのは、田所君と小倉君の二人から殺意を抱かれていた、小鳥遊君だけれども、ね」

「アイツなら立ち直り早いんじゃねぇの?」

「そうだろうか。お前と一緒で、きっと繊細な子だよ」

「ケッ。俺とアイツを一緒にするなよな」


 俺は立ちあがり、自分の部屋を後にした。


「アイツ、規格外なんだぜ?」

「確かに、まだ生きているからね。規格外なんだろうね」


 俺はアイツの部屋に向かった。




「よ! 起きてるか?」

「目覚めは比較的いいほうでね」


 小鳥遊は親父と同じ格好でお茶を飲んでいた。似合ってやがる。


「あれから一週間だね」

「そろそろ死ねよ」

「それが、あの日以来、体の調子がイイんだよ。困ったな」

 呪いは、対象者への憎悪をエネルギーとしている。そのため、小倉翼から小鳥遊天への憎悪が消え、憎悪とは逆の感情、「生きてもらいたい」という感情が芽生えたために、呪いはエネルギー源を失い、一時停止の状態にあるらしい。親父の推測だとそうなる。

 もしも、小鳥遊が生きているということが、小倉翼の耳に入ったら、そして、騙されたと思い込んでしまったら、憎しみを抱いてしまったら、その時は、呪いが再び動き出し、小鳥遊天は命日を迎える。

 結局、コイツは、生き延びたが、小鳥遊天として生きていくことが、できなくなってしまった。


「僕の新しい名前を考えなきゃだね」

「好きにしろよ」

「読者の方の投票制にしようか」

「何を言ってるんだよ?」

「僕って規格外だからね。こういうこともできるんだよ」


 わけがわからん。笑うところか?


「あのさ、琥珀君」

「なんだ改まって」

「感謝しないとね。命の恩人だし」

「なにもしてないぜ。お前が自己解決したんだろ?」

「そんなことないよ。アッシー君としての君の活躍がなければ、コスプレをしてくれなかったら、僕は死んでいた。ありがとう」

「感謝と侮辱を一緒に言うな」


 器用な奴だ。


「本当に、感謝しているよ」

「男に言われても嬉しくねぇよ」


 ま、悪い気はしないけどな。


「そうか、悪い気はしないのか」

「テレパシーかよ!」

「僕はエスパータイプだからね」


 琥珀君はかくとうタイプだよね。と言いたげな目でこう言った。


「琥珀君はかくとうタイプだよね」

「そのままなのか! これもテレパシーなのか?」

「なんのことかな?」

「とぼけてんじゃねぇよ!」


 この後も、アイツがこの呪いで死ぬことはなかった。

 俺としては、どうでもいいこと、だけどな。 




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ