魔法学園編②
今から約20年前。
召喚された勇者候補により
魔王は打ち倒され、世界は平和を取り戻した。
そして今また、新たな魔王が誕生し、
改めて勇者候補が召喚された。
国の話題はどの勇者候補が魔王を倒すかで
連日持ち切りなのだ。
この世界の教会は女神を信仰しているが
その女神の子として別世界から召喚されるのが
この勇者候補というわけだ。
……な〜にが神の子だよ。
私は、出世を諦めた、しがないサラリーマンと
韓国アイドルの推し活に夢中な主婦との子だよ。
そういや、パパとママは元気なのかな?
もう会えないのかな……。
教会と王都はこの勇者候補を育て上げることに
莫大な予算をかけているようだ。
賢者スキルを持ったこの男"シュナイダー"は
すでに学園内にてとんでもない影響力を持っていた。
「俺は勇者様だぞ!」
見事なまでにオラオラと肩で風を切って歩く姿は
チヤホヤされて勘違いしていて見てて実に面白い。
生徒会室に籠っている私達は
そんな勇者候補のことは
相手にせず黙々と作業を進めている。
シンシアからの予定報告。
「明日は領地内のメッセ商会との打ち合わせ。
そのあとは冒険者ギルドのマスターと。
明後日は王都で会議と会合でございます。」
「次に学園に来るのは明明後日です」
「会長わかりました!」
うちの主は本当に忙しい。
自分の領地の内政もあるし
王族貴族との社交から
この魔法学園の生徒会長まで。
私はただ横で荷物を持って付き添っているだけで精一杯。
慌ただしくすぎる毎日をただただよくわからず
ヒィヒィ言いながら走ってついていくだけ。
夕刻。
お手洗いに出た私の目に入ってきたのは
例の勇者候補が外で魔法を披露している姿だった。
ポップコーンがはじけるような勢いで
火の玉を次々と放つその姿に
教師も生徒も拍手喝采。
ちょうど私の横にマリベルが来て
ご丁寧に賢者スキルについて説明をしてくれる。
「普通は、魔力が多ければ多いほど、
より強力な魔法をたくさん打つことができます。
彼はその魔力が無限で尽きないのです。
さらには魔法というものは詠唱してから打つのが
当たり前なのですが、賢者スキル保持者は
無詠唱で魔法を打つことができます」
「……すごい。ほんとにチートスキルなんだ。」
「はい。今最も勇者に近いと言われているのが
あの賢者スキルを持つシュナイダー様です」
私が元勇者候補だったなんてことは
エルデシュタイン家の人しか知らない。
もしかしたら私があのスキルを手にしていた可能性もあるんだ。
そうか、もし、そうだった世界線があれば……。
間違いなく私も調子に乗りまくって
美男美女はべらせて毎日ヒャッハーしてるね。
うん。絶対やってると思う。
「おい!聖女!何してるこっち来い!」
「ひっ!……は、はい〜……!」
私に軽く会釈をしてワタワタと走っていく彼女。
手を振る私。
「マリベルふぁいと〜……」
あの男は私と実際一度会っているのだが、
もちろん私の事など覚えていないのだろう。
どうやらマリベルもシュナイダーに
いいようにこき使われているようだ。
あの聖女はきっと不幸なポジションなんだろな。
王子様とのハッピーエンドルートにぜひ
入ってもらいたいものだ。うんうん。
屋敷への帰り道。
私はあまりにも好き勝手してる勇者候補について
恐れ多くも発言してしまう。
「……ヴィオラ様。あの勇者候補ヤバいですよ」
「何かありまして?」
「先生もマリベルもみんなびびって下僕みたいに」
「あらそう。副会長に指示は出していますので
特にあなたは気にしなくてよろしくてよ。」
ヴィオラ様は相変わらず興味が無いので、つい私は
「……大丈夫なんですか?」
心配して意見してしまう。
すると
「……勇者候補なんて何人もいますわ。
……ねぇ、元勇者候補さん?」
悪魔のごとき笑みを浮かべる我が主に
私は心底震え上がる。
ですよねー!!
まさにここに、何の役にも立たず
相手にする価値もない
元勇者候補がたしかにいます!
あなた様の言う通りです!
「クスクス」
シンシアは最近私を見てよくクスクス笑う。
絶対性格悪いよこのゴリマッチョメイド。
圧倒的最強の悪役令嬢は
今日も変わらない。
扇を口元にたずさえ、
圧倒的な強者として私達を魅了してくれる。
「……そうね。
その勇者候補が
魔王とやらを倒して
ちゃんと勇者になりましたら」
扇が鳴る。
ピシッ!
「ワタクシへの謁見を許可してさしあげますわ」
ドドン!!
……はい、私はあなた様を
肉眼で見れて光栄でございますよ。
しかし、
次に魔法学園に行く日に
やはり事件は起きる……
読んでいただきありがとうございます!
もし、少しでも面白いな、
続きが気になるなと
思っていただけましたら
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