転生少女と悪役令嬢③
ヴィオラ・エルデシュタイン侯爵令嬢は
本物だった。
媚びへつらったり、
嫌がらせをしたりするような
チンケなやられ役の悪役令嬢ではなく、
ワガママなんてものを通り越して、
まさに
"天上天下唯我独尊"
既に、この国で数々の伝説を作っていたのだ。
なんと私と同じ17歳でありながら
この国で3番目に大きい領地の領主代行であり、
魔法学園に通う令嬢(当然の如く生徒会長)でもあり、
国の会議に呼ばれる重鎮でもある。
あまりに忙しい彼女は
魔法学園に通うのがめんどくさいから
学園を我が領地に作り直せと言ったり
国の会議に出るのが嫌で
国に対してお前らがこっちに来いと言って
国とガチ揉めしそうになったりと、
完全にお前らが私に合わせなさいというスタイル。
とんでもない人に捕まってしまったのだと
この屋敷で、嫌という程痛感することになる。
さてさて、屋敷に来て、一週間。
私がここで、一体なんの役に立つのか。
確認からはじまった。
まずは、セバスチャンと魔法の素質の確認から。
セバスチャンはこの屋敷で1番魔法の知識があるのだそう。
「ヴィオラ様に魔法を教えようとした時のことを思い出します。この国の貴族の令嬢は魔法学園に通うことが決まっているためヴィオラ様はこう言いました。」
「なぜ魔法学園で魔法を習うことがわかっているのに別で魔法を教わるの?そんな時間の無駄なことは致しませんわ。」
「そう言って一切魔法の勉強をしてくれませんでした」
ヴィオラ様の親の代から仕えているというこの執事もヴィオラ様には全く逆らえない。普段は内政に関して担当しているらしい。
「ええ、ところでナミ。あなた魔力ゼロです」
私には魔法の素質がないことが、よくわかりました。
残念ながら火を放ったり氷を作ったりはできません。
続いて、私は剣を握らされた。
シンシア……という名のマッチョメイドは言う。
「私はそもそもヴィオラ様の剣術の家庭教師としてこのエルデシュタイン家に来ました」
あ、やっぱ、あなたそっちが本業だったのね。
ただ、そんなマッチョメイドに対しヴィオラ様は
「こんな剣術を教える暇があるなら、あなたがワタクシのボディガードをすればよろしいのではなくて?」
3日で家庭教師をクビにされ、
ボディガード兼メイドとして今に至るという。
みんなよく仕えてますねあのお方に……。
「ナミ。あなた。
武術に関してはセンスの欠片もございません」
剣を振ろうとすると剣が空へ飛んでいく私に
このマッチョメイドは可哀想な何かを見る目を向けてくる。
ええ、わかりましたとも。
剣も魔法も全くダメなことは
これでよくよくわかりましたよ。
本格的に雑用しか与えられなくなった私にも
嬉しいことがひとつ。
なんと、お友達が出来ました。
「ナミちゃん掃除終わった〜?」
ルチアはとても明るいフレンドリーなメイド。
栗色の髪をお団子にしたとても愛くるしい彼女は
実は情報屋兼メイドらしく、
私の勇者候補の情報を集めてきたのも彼女だそうだ。
おそらくこの圧倒的なコミュ力を駆使して
色んな情報網をもっているのだろう。
だから
ほんとは
友達と思ってるのは私だけで
きっと彼女は誰とでも仲がいいのだ。…ぐすん。
「掃除終わったらキッチンにサボりに行こ〜♪」
こうゆうノリは大好きである。
一生甘やかされて生きていきたいものだ。
シェフのオズワルドが唸る。
「ヴィオラ様が健康志向の料理を食べてくれなくてね。」
デザートをつまみ食いしにきた私とルチアの横で
腕利きシェフはどうにも悩んでいた。
昨日も。
「不味い。なんですのこれは?
ワタクシ美味しいものしか食べませんわ」
席を立ってしまうヴィオラ様。
素人の私から見てもこのシェフは相当腕がいい。
この一週間の献立を見ててもどれも
貴族に相応しい抜群の一流料理。
しかし、今この国では美味しいお料理よりも
健康志向のお料理、野菜や豆等を中心にしたものが主流になってきているらしく、新たにそれを出すのだが、舌の肥えたあのお方は全く食べてくれないという。
「もちろん健康の為とはお伝えしているが
まったく、ヴィオラ様は聞く耳を持ってくれない」
……ほんとあのワガママ令嬢にも困ったものだ。
いや、まてよ?
この展開。
何か既視感があるぞ?
これは転生前の日本料理の知識を活かして
私が見事な料理提案をするという
異世界もののお決まりムーブではないのか!?
キタキタ。ついに私の時代が。
剣も魔法も、掃除すらもろくにできない。
そんな私の一発逆転展開。
しかし、
深夜にカップ麺にお湯を入れることを"料理"と呼ぶ
オタク女子高生にここで提案できる料理など
あるわけがなかった。
オワタ\(^o^)/
この異世界、食材は日本で見るものと大差はない。
味付けは少し欧米寄りだが私が食べてもどれも美味しい。
健康ね〜……
若いうちにそんなこと考えないよね〜。
美味いもん食いたいよね。
そりゃそうだ。
私も肉食いたいもんね。
冬は鍋でポン酢さえあれば幸せしかない。
ん。
ん?
ポン酢?
この世界で見たことないな?
柑橘系の果物はあったので
もしかしてこれならーーー。
翌日。
私の提案で作ったポン酢モドキを添えて
オズワルドがたっぷりの野菜と豆の鍋を出す。
「まぁ、このソース美味しいですわ。
オズワルド、やれば出来るじゃないの。
この調子で常に美味しさを追求しなさい。」
「……!ありがとうございます…!」
大成功〜♪
やったやった!
実際のところは
健康で、かつ、美味しいものを作れという
シェフに対しての課題だったのだろうが
この当時の私にはヴィオラ様に
そこまでのお考えがあったことなど知る由もない。
オズワルドと、ルチアと、私の3人が
ハイタッチをして喜んでいる姿を
ヴィオラ様はじっと見る。
「……」
「ナミ」
ヴィオラ様が呼ぶ。
「はいっ!」
「明日から、魔法学園に同行しなさい。」
「……は!はいっ!!」
なぜかヴィオラ様の学園へ同行することになった私。
これで本格的に悪役令嬢の取り巻きポジションになってしまう。
嫌な予感しかしない。
ええ。
もちろん。
この魔法学園…
とんでもないドタバタ展開になることは
言うまでもない……。
読んでいただきありがとうございます!
ここまでが序章になります。
次回からの魔法学園編ぜひお楽しみに!
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