転生少女と悪役令嬢①
その姿は、まさに、
完成されていた。
金髪縦ロール。
真っ赤なドレス。
手には口元を隠すふわふわした扇。
悶絶級の美貌とスタイル。
さらに妖艶に紅く光る瞳。
両翼には執事とメイドを従え、
私を見下すように蔑むその姿は
「絶対、悪役令嬢だー!!!」
これは見たことある。
アニメで。ゲームで。ラノベで。
しかも一番タチの悪いやつだ。
「……悪役……?」
口元を隠すその扇の向こうで眉がぴくりと動いた。
あー終わった。
完全に地雷踏み抜いた。
――――――――――――
数時間前。
王都の城。
やたら神々しい魔法陣の真ん中で、
私は立っていた。
「…え!…ここどこ!?」
「勇者候補は、以上4名――」
「勇者召喚成功だ!!」
ワアア!!
え、4人?
周りを見ると、私以外に3人。
キョロキョロしている
恐らく召喚された人が……。
ここ、こ、これは!!!
"異世界召喚"きたーーーー!!
他の3人は最初動揺していたようだが、
私は歓喜に震えた。
なぜなら
私は日本に住む女子高生。
名前はナミ。
典型的なアニメゲーム好きのオタク。
昨日ももちろん深夜アニメをみていたクチだ。
当然日の目など浴びる人生ではなかったけれど、
妄想し続け、夢にまで見た異世界生活。
ついに報われた気がした。
人生バラ色。
この世の全てを手に入れる展開のやつだ。
――そう思っていた時期が、私にもありました。
「……では、スキル鑑定を行う」
一人ずつ、光が走る。
剣聖のスキル!!
ワアア!!
賢者のスキル!!
ウオオ!!
神速のスキル!!
ギョエー!
拍手喝采、ざわつく神官や騎士たち。
王様ぽい人もニッコニコ。
いよいよ私の番。
いやぁ、
ど〜も〜♪
すいませんね〜♪
輝かしい異世界生活での
勝ち組確定コース。
どんなスキルが来るのかな〜♪
「……え?」
神官がもう一度水晶を覗く。
「……無し」
「無し?」
「スキルが!存在しません!」
……は?
しーん…
気まずいやつ…
「勇者候補としては不要だ。
多少の生活費は渡すので
城を出て、仕事でも探しなさい」
ちょ、待って!嘘でしょ!?
異世界来て即リストラ!?
こうして私は、銀貨数枚だけ渡され、
城から放り出された。
行くあてもないので街に出た私は
ひとまず酒場に入り情報を集めた。
うん……やはりここは典型的なファンタジー世界。
剣と魔法、勇者と魔王。
国には王様がいて、街は貴族がおさめる。
街の外には魔物。
種族は人間以外にエルフやドワーフなど。
各街では商人、職人、市場が活気づいていた。
しかし
それからの私は地獄だった。
酒場で優しく声をかけてくれたお兄さん。
「そりゃ王都もひどいね、こんな銀貨じゃ3日も持たねぇ。俺が10日は過ごせる格安の宿を紹介してやるからついてきな。そこでゆっくり身の振りを考えるといい。」
いい人もいるもんだとついていけば
いつのまにかお兄さんは消えていなくなり、
銀貨の入った袋も一緒に消失。
途方にくれて冒険者ギルドに行ってみれば
すごい怖い冒険者に女子供が来るなと追い出され。
路地裏でしゃがみこんでたら
お嬢ちゃんアメちゃんあげるよ、ついておいでと
バカでもわかる人攫いに遭遇。
半泣きになりながらも
なんとか走って人攫いを撒いた私は
勢い余って人にぶつかってしまった。…ドン!
「わわ!…す、すいません!!」
「これは失礼。お怪我はありませんか?」
燕尾服のダンディな眼鏡イケおじ。
執事!執事ぽい!!絶対執事!!
さらに。
「どうかしましたか、セバスチャン?」
眼鏡イケおじの後ろから現れたのは
これまたいかにもな
メイド姿の女性。
「出たー!ド定番執事ネームキター!!
やっぱり執事はセバスチャンなのね!?」
つい叫んでしまう。
「……??……だ、大丈夫ですか?」
「わ!すいません!」
すでに異世界生活があまりにも詰んでいたので、
つい、私は…
「わ、私さっきお城で召喚されて、でもいらないって追い出されちゃって、お金スられるし、変な人追いかけてくるしで……!!」
ワーワーと喋ってしまった。
すると、
「少しお待ちください。
ヴィオラ様をお呼びします」
次の瞬間ーーー
空気が変わった。
人混みが、音が、ざわめきが、
全部遠のく。
人攫いも、ギルドの人も
お城の神官や騎士達にも何も感じなかった
あきらかに異質な雰囲気。
圧倒的なカリスマ。
支配者の貫禄。
そんな空気を纏い、
彼女は現れた。
そして――冒頭のシーンに戻る。
「……おい、あれ!あそこにいるのって……」
「まさか、あの噂の、冷酷非情の暴君…」
「ヴィオラ・エルデシュタイン侯爵令嬢よ!」
周りの人達も恐れ、震え上がる。
その令嬢に、執事がそっと耳打ちをする。
するとその令嬢はゆっくりと
私に顔を近づける。
じー…
「ひえっ」
よく見ると私とそんな歳変わらないのかも…
あまりの美しさにもはや見とれてしまい
「…うわー…綺麗〜…まつ毛長…つけまかな…」
「…つけま?」
はっ!しまった!声が出てた!
慌てて口を抑えた私だったが
どうやら手遅れ……。
「……この女を捉えなさい」
「はい!」
(終わった……)
(奴隷生活だ……)
異世界に来て
早くもゲームオーバー感。
しかし-----
これが
今後
私の主となる
最強悪役令嬢
ヴィオラ・エルデシュタイン侯爵令嬢との
出逢いだった……。
読んでいただきありがとうございます!
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