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『白い朝の旅立ち 〜65歳からの再出発。元技術部長が信州の町工場を救う物語〜』 第8話:老社長の願い、真一の覚悟
病床の老社長から託されたのは、会社の未来そのものでした。真一が選んだのは、「自分」のためではなく「次世代」のための決断でした。
そんな真一を呼び出したのは、陽燦社の創業者、九十歳近い桐生老社長だった。
「高木さん、不満に思われて当然でしょう。部下に任せきりで申し訳ない」
病床にある老社長は、切実な眼差しで続けた。 「次男を呼び戻して経営を継がせます。どうか、彼と共にこの会社を担ってもらえませんか。あなたという『常務』が必要なのです」
真一は言葉を失った。 退くこともできる。だが、それでは若林や仲間たちを置き去りにすることになる。
「……分かりました。私にできる限りのことをやらせていただきます」
若林と共に進みたい。 その気持ちが、迷いを消し去った。
帰宅し、妻の智子に告げる。 「智子さん、役員になることにしたよ。これからも支えてほしい」 智子は静かに微笑んだ。 「ええ、ずっとあなたを支えます」
ついに「常務」就任! 第4話で沙織が口にしていた言葉が、現実のものとなりました。家族の支えがあるからこそ、男は再び戦場へ向かえるのですね。




