【No.84】冬を彩る ヤツデ
ヤツデ(ウコギ科)
Fatsia japonica
ヤツデです。
古い民家の玄関先なんかに、良く植えてあります。天狗の羽団扇みたいな大きな光沢のある葉をつける低木。大きさは1mからせいぜい3mくらい。10~12月に、白い小さな花を沢山咲かせます。花には、ちょっと暖かい感じの香りがあります。
分布は本州(茨城県以南)、四国、九州、沖縄。まあ、概ね日本の南半分に生える、みたいな感じですかね。庭に植えられるだけでなく、樹林の林縁部などに自生しているものも良く見かけます。ちなみに日本固有種だそうです。
ヤツデが属するウコギ科は、こういう白い小さな花が球状の花序にまとまり、それが幾つも集まって花穂になります。ウコギ科はセリ科に近縁なのですが、セリ科のように平らな花序を作りません。山菜として知られるウドもウコギ科ですが、花はヤツデに良く似た丸い花序になる。
<ウドの花>
ちなみに、壁面緑化なんかに良く使われるヘデラ(キヅタ)もウコギ科。花は高い所に咲くので見る機会が意外と少ないのですが、こんな花。やっぱりヤツデと似ている。
<ヘデラ(キヅタ)の花>
そんなウコギ科の中では、ヤツデの花は派手なほうに入るでしょう。
<ヤツデの花>
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ヤツデの花は、5枚の白い花びらを持つのですが、咲いてしばらくすると、この花弁は雄蕊と一緒に散ってしまいます。後に残るのは雌蕊だけ。つまり、咲いた当初は雄花のような役割をして、時間が経つと花弁と雄蕊を散らして雌花になる、という風に、ひとつの花が雄性期と雌性期を持っていて、それぞれ雄花と雌花の役割を果たしています。蜜の量は結構多いようで、花が咲くとハエやハナアブの仲間が結構沢山集まってきます。
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ヤツデという名前は、漢字で書くと「八つ手」であり、葉が掌状に八つに分かれているように見えることからこの名がありますが、実際は幾つに分かれているんでしょう?
余計なことを、と言われそうですが、数えてみました。
結果発表。「八つ」じゃないですね(笑)。
数えてみると、一番多かったのは「九つ」。次いで「七つ」。「八つ」のもあるけど少ない。
つまり、奇数が基本のようなんです。
まあ、「なんか沢山分かれてるけど、八つくらいじゃない?」というくらいのノリで命名されたんじゃないでしょうか。
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花言葉、調べたらありました。
「健康」「分別」「親しみ」だそうです。
「健康」、なんか分かるような気がします。




