【No.71】シリーズ可哀そうな名前③ ママコノシリヌグイ
このシリーズも3つ目になるんですが、今回のが多分最悪の名前。
汚い、痛い、差別的。これを超える名前はちょっとないでしょう。
ママコノシリヌグイ(タデ科)
Persicaria senticosa
「継子の尻拭い」ですよ。
意地の悪い継母が言うわけです。「お前の汚い尻なんか、その棘だらけの草ででも拭いときな。」って。
うわー痛そう。
上の写真をよく見るとわかりますけど、右側に写っている茎には、下向きの小さいけれども鋭い棘がある。良く見ると葉柄にも棘がある。これで尻なんか拭いた日には、肛門周りが血だらけになります。
このママコノシリヌグイ、湿地のヨシ原の中なんかに生えます。茎は長いんですが自立できないので、傍に生えてるヨシの茎なんかに凭れるようにして成長します。その時に、ヨシの茎にひっかかりやすいように、下向きの短い棘が生えています。以前に出てきたタチスミレなんかと戦略は同じ。タチスミレは単に長い茎でヨシによりかかるだけですが、こいつらは棘でひっかけて、より確実にヨシの茎に自らを固定しようとする。
タデ科にはこういう戦略の種が他にもいくつかあります。イシミカワ、サデクサ、ウナギツカミなんかがそうです。どれもヨシ原等、湿った高茎草地の中に生えます。で、どれも茎に下向きの鋭い棘がある。
イシミカワ(タデ科)
Persicaria perfoliata
上の写真はイシミカワ。ヨシ原の調査なんかでこれに良くからまれます。痛いんですこれが。
ちなみに、写真の下に写っている青いものは実です。この青い実、実は花弁が大きく厚くなって種を包んだもの。花が受粉すると花弁が閉じて肥大し、青い色がついて果肉のようになるという、面白い実のできかたをします。
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さて一方、同じ湿地でも、背の低い草が生える明るいところに生えるミゾソバなんかは、茎に棘がありません。そもそも背も低いので、ちゃんと自分の茎で自立して花を咲かせます。
ミゾソバ(タデ科)
Persicaria thunbergii
これ、田んぼの脇の水路や放棄水田なんかでよく見かけます。花は金平糖みたいで結構きれい。
ママコノシリヌグイも、花はこれより小さくて地味ですが、色はミゾソバと変わらないきれいなピンク色。いくら棘があるからって、「ママコノシリヌグイ」という名前はちょっと………
可哀想じゃないですか。




