【No.70】秋の七草+1 その8 フジバカマ
「秋の七草+1」、最後はフジバカマです。
フジバカマ(キク科)
Eupatorium japonicum
写真が良くありません。画面が若干白く霞んでいるのは、雨の日に撮ったせいで、レンズの曇りが残ってしまったから。今年どこかで撮り直したいところです。
この花、例によってやっぱり近年数を減らしています。なんだかもう「秋の七草」のお約束みたいですが、フジバカマは中でも深刻なほうで、環境省のレッドリストで準絶滅危惧(NT)に選定されています。
「え?この花うちの近所にたくさん咲いているよ?」
そう思う方、多いかも知れません。
実は、この仲間は「ヒヨドリバナ属」と言って、ヒヨドリバナやヨツバヒヨドリ等、何種類かあります。で、花だけ見るとどれもそっくり。ヨツバヒヨドリ等は林縁や草地で普通にみられます。
ヨツバヒヨドリ(キク科)
Eupatorium chinense subsp. sachalinense
でも、フジバカマはめったに見られません。
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フジバカマは、香りがよいことで知られる草。
でも、生の状態ではほとんど香りません。ところが、これを刈り取って乾燥させると、どこかで嗅いだことのある甘くて独特な香りがします。
この香り、実はあれとおんなじなんです。桜餅。
桜餅の香りも桜の葉を塩漬けにすることで出てきます。「クマリン」という何かのキャラクターみたいな名前の物質が、その正体。なので、昔の人もフジバカマを刈り取って、乾燥させてその香りを利用したんでしょうか。
クマリン、実は意外な用途にも使われています。それは不正軽油の識別。
軽油はディーゼルエンジンの燃料で、「軽油取引税」がかけられています。ところが、税がかからない灯油やA重油等をある程度混入してもエンジンは回ってしまうので、脱税目的で軽油に灯油を混ぜたりした不正軽油が出回るおそれがあります。そこで、灯油やA重油等にはこの「クマリン」を添加してあります。そうすることで、これらを軽油に混ぜた不正軽油は、紫外線を当てると黄色く光り、識別できるのだそうです。
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フジバカマ、実は古い時代に中国から入ってきた「史前帰化種」であるとも言われています。まあ何分古い時代のことですから証拠はありませんが、ヒガンバナやヒメスミレ等と同じで、人里近くでしか見られないこと等が状況証拠とされています。
それを準絶滅危惧種として扱うのはいかがなものか、という意見も一部にはありますが、何しろ証拠がありませんしね。
以上で、秋の七草+1、終了です。
ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。




