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あてどない植物記  作者: 蘭鍾馗


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【No.67】秋の七草+1 その5 クズ

 あー……………。


 活動報告にも書きましたけど、大ポカをやってしまいました。

 ワレモコウ、秋の七草じゃありませんでした。

 そんなわけで、シリーズタイトル微妙に変えてみました。とりあえずこれで許して。


 それはそれとして、今回はクズ。


クズ(マメ科)

Pueraria lobata

挿絵(By みてみん)


 樹林の林縁部や崩壊斜面等に生えます。がけ崩れ等で出来た裸地斜面や樹林の伐採で出来た新たな林縁部を旺盛に成長するつるで覆い、崩壊や植生の後退を防ぐ役割を持つため、「森の絆創膏」なんて呼ぶ人もいますが、いかんせん生命力が強すぎ、繁茂すると他の植物が入ってこれなくなるので、しばしば「傷が治っても剝がせない絆創膏」になってしまいます。

 なので、緑化植物としては、有能だけれども扱いづらく、クズを使った緑化はほとんど見かけません。


 ◇


 まあそれでも、秋の七草に選ばれるだけあって、花は美しい。


<クズの花>

挿絵(By みてみん)


 海老茶というか、くすんだ赤紫色みたいな色彩。これで穂が長ければ、フジの向こうを張るくらいの花になったでしょう。しかも、甘い香りがする。香りだけを取り上げるならば、フジ以上です。

 でも、どうしても鬱陶しい藪の印象をぬぐい切れないのは、ひとえにその大きな葉が暑苦しいから。せっかくの薫り高い美しい花も、この暑苦しい葉の陰に隠れて咲くので目立ちません。


<クズの葉>

挿絵(By みてみん)


 まあ、これではちょっとねえ。

 これがフジくらいスマートな葉だったら、今と全く違う評価をされていたかも知れません。樹勢も今よりはおとなしくて、「傷が治るとちゃんとはがれる絆創膏」になっていたかも知れません。


「樹勢?」


 そう、クズは実は樹木なんです。ただし、フジやテイカカズラみたいにつるが木化するわけではなく、木化するのは根元の一部分だけ。なので、あの良く伸びる鬱陶しいつるのほとんどは、一年で枯れます。


 それでも、この美しく薫り高い花を愛でるために、藤棚みたいな「葛棚」が作られることがあります。まだ見に行ったことはないのですが、向島百花園にあるそうです。


 花時にはきっと、いい香りがするでしょうね。


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