【No.65】秋の七草+1 その3 カワラナデシコ
その3は「河原撫子」。
カワラナデシコ(ナデシコ科)
Dianthus superbus L. var. longicalycinus
カワラナデシコです。
青森県東通村以西の本州、四国、九州に分布します。
「大和撫子」なんていう言葉があるくらい、日本の美しい女性に例えられる優美な野の花。
名前の通り、もともと河川敷の河原なんかに生えるのですが、今は河原へこの花を見に行ってもカワラナデシコはまず咲いていない。ちなみに上の写真は、岡山県の湿原で見つけたもの。
代わりに河原で咲いているのは、大抵これ。
ムシトリナデシコ(ナデシコ科)
Silene armeria
これ、ヨーロッパ原産の外来種で、近年河原でよく見かけます。街中の道端でも時々このショッキングピンクの花が咲いているのを見かけることがあります。江戸時代に観賞用として入ってきたものが野生化したんだそうです。ちなみに、「ムシトリ~」の名の由来は、葉の付け根に粘液を分泌する場所があって、そこに虫が捕らえられるから。でも、別にとって食うわけではないようで、葉を食害する虫や、受粉せずに蜜だけ盗んでいくアリなんかを足止めするためのものらしいです。
鬼怒川や荒川、多摩川なんかには、今でもカワラナデシコが群生する河原があるそうです。
カワラナデシコ、薬草としても用いられます。
漢方では「瞿麦」(クバク)と呼ばれ、利尿作用・通経作用があり、膀胱炎や尿路結石など、主に泌尿器関係の症状に効くようです。
◇
このカワラナデシコの近縁種で、高山に生える種類があります。タカネナデシコです。
タカネナデシコ(ナデシコ科)
Dianthus superbus var. speciosus
カワラナデシコの高山型の変種ともいうべき種で、中部以北の高山帯の岩場や草地に生えます。ナデシコよりも花の中心の斑紋がはっきりしており、色も濃い傾向があるように思います。カワラナデシコよりも背が低く、周りに他の草がない岩場に群開すると大変見事です。
写真は早池峰山の山頂直下の岩場に咲いていたもの。ここはかなりの数のタカネナデシコが咲くので、花時の8月頃に登ると、大変見事な光景が見られます。
花言葉?
「大胆」「可憐」。調べてみると、真逆のような意味の2つの言葉が出てきました。
「可憐」はともかく、「大胆」はちょっと意外。
以上、河原撫子の話でした。




