【No.6】甘くて苦くて油臭い イヌガヤ
イヌガヤ(イヌガヤ科)Cephalotaxus harringtonia (Knight ex Forbes) K.Koch var. harringtonia
前回は写真貼りすぎでした。重たくなったかも。反省してます。
で、また針葉樹。イヌガヤです。
植物のネーミングでは、大体において「イヌ」という言葉は「役に立たない」とか「これじゃない」みたいな意味で使われます。「否」から転じた、という説があります。つまり、イヌガヤは「役に立たないカヤ」「これじゃないほうのカヤ」くらいな意味になりますかね。
ちなみに、イヌガヤとカヤの見分け方ですが、簡単です。葉先に鋭い棘があって触ると痛いのがカヤ、柔らかくて痛くないのがイヌガヤです。葉のついた小枝を何本かまとめて握っても、イヌガヤなら平気ですが、カヤでこれをやると、多分血が出ます。
イヌガヤ、写真のような実が成ります。これはまだ未熟で色が薄いのですが、完熟するとまるで葡萄のような赤紫色になります。カヤの実は中の種が食用になりますが、外側の果肉は食べられません。で、イヌガヤは逆で、外側の果肉が食べられます。うん、そうね。食べられないことはない。というか、実はすごく甘いんですが、ちょっと難点が。
昔、完熟したイヌガヤの実を手に入れて、食べてみたことがあります。
口に入れて噛んだ瞬間、「甘い!」と感じました。えっ?これ美味しいじゃん。すごく甘い。お菓子のように甘い。
でも、噛んでいるうちに、皮の部分からだんだんと苦みが。そして、追い打ちをかけるように、油臭さが襲い掛かってきます。うーん・・・・・なんとか飲み込みましたが、フルーツとしてはちょっと難ありかな。
でも、その時は結構な量が手に入ったので、ふと思いついて、焼酎につけて果実酒にしてみました。
そしたら、これが大正解。
生食で気になった苦みと油臭さは、果実酒にすると逆にいい感じのアクセントに。そして、色がいい。赤紫のきれいな色の、美味しい果実酒になりました。
果実酒というのは面白くて、生で食べた時と果実酒にした時で、味や香りが変わることが時々あります。イヌガヤはこれの典型的な例でした。
それ以来、またイヌガヤの実を探しているのですが、なかなか手に入りません。
美しくて美味しいあのイヌガヤの果実酒を、もう一度作ってみたいのですが。
ちなみに、日本海側の多雪地に生えるハイイヌガヤの実は、苦みがなくて美味しいそうです。
一度味わってみたいものです。