【No.60】レース細工の花 カラスウリ
カラスウリと言えば、秋になると見かける赤い楕円形の実。雑木林の林縁によくぶらさがっているこんなやつ。
カラスウリ(ウリ科)
Tricosanthes cucumeroides
実を割ってみると、中は熟柿みたいにドロッとしている。一度食べてみたことがありますけど、微かに甘い程度であんま美味しいものじゃありません。真似しないでね。
でも、花を見たことのある人は少ないかも知れません。それは、夜に咲く一日花。こんなやつです。
〈カラスウリの花〉
咲くのはとっぷりと日が暮れてから。萎むのも早くて、明るくなる前に萎んでしまいます。なので、身近に生えている割には、花を見る機会がなかなか無い。
花は、花弁の縁が糸状に深く切れ込んでいて、まるでレースの細工物のようで、繊細な美しさがあります。花には香りがあって、夜行性のスズメガの仲間を呼んで受粉させます。
なんでこんな凝った形をしているのか。
一説によると、暗闇の中で花を実際よりも大きく見せるためだとか。でも、花弁のフギレは余りに細くて、花を大きく見せる効果は薄いような気がする。
カラスウリの近縁種でキカラスウリというのがあるんですが、こっちはフギレ部がある程度太いので、花が大きく見える効果はありそう。
〈キカラスウリの花〉
ちなみに、こっちは萎むのが遅く、明るくなってからも開いた状態がみられます。
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カラスウリには薬効もあります。
根は王瓜根と呼ばれ、せき止めや便秘薬として効果があるとか。種からは天花粉が作られます。薬に使われるのは主にキカラスウリの方だそうです。




