【No.59】湿原の最後の花 エゾリンドウ
夏が終わります。
今年の夏は、私は大腸の手術をしたりして、余り出掛けられなかったのですが、この間の日曜日、長野県の入笠山に行ってきました。ここは9合目までゴンドラでいけるので、術後の落ちた体力でもなんとかなる。
さすがに8月末ですから、湿原の多くの花はもう終盤。しかし、この時期に見頃を迎えていた花が一つだけありました。エゾリンドウです。
エゾリンドウ(リンドウ科)
Gentiana triflora var.japonica
なんだまだ蕾かよ、って思った人、居るかも知れません。実はこれで咲いている状態です。螺旋状に固く巻いた蕾がほどけたら、それで開花。もともとこういう咲き方をします。
何故そんな咲き方をするかと言うと、飛行距離の長いハナバチ類に訪花して欲しいから。これは以前にご紹介したヤマエンゴサクやウンランなんかと同じで、力のあるハナバチ類だけが半開きの花をこじ開けて蜜を吸えるようになっているのです。花屋で売られている切り花のリンドウは、このエゾリンドウを品種改良したものなので、やはり花は半開きまでしか開きません。これくらいが限界。
〈いや本当にこれくらいが限界〉
一方、鉢花として売られているリンドウは、低山に咲くリンドウ(『リンドウ』という名のリンドウです!)で、こちらは花が大きく開きます。切り花と鉢花で使われる種類が違うのは、多分観賞する目線の高さが違うから。切り花は花瓶に活けて横から眺めるので、花は半開きで問題なし。でも鉢花は上から眺めますから、ちゃんと開いた方がいい。あと、鉢花にする「リンドウ」は花の外側が茶色く濁った色をしているので、横から観賞すると、あんまり綺麗じゃない。そんなわけで、使い分けているんじゃないでしょうか。
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エゾリンドウは薬草でもあります。
漢方では「竜胆」という名で、健胃作用があるとされます。大変苦いそうです。ゲンノショウコといいセンブリといい、何だか胃の薬は苦いものが多いようですね。
その他、食欲不振や消化不良にも効き、解毒や解熱の作用もあるそうです。
花言葉は「誠実」「悲しんでいる貴方を愛す」「勝利」「正義」「遠い愛」なんだとか。




