【No.58】最近見かけない ウツボグサ
昔は身近に咲いていたはずなのに、気がついたら最近見かけなくなった。そんな花があります。例えばキキョウ、オミナエシ、エビネ、キンランなんかがそうでしょうか。
この花も、以前は田んぼの畦道なんかで良く見かけたのですが、最近見る機会が減ってきて、この間、そういえば最近見たのは高い山でばっかり、と気がつきました。
ウツボグサです。
ウツボグサ(シソ科)
Plunella vulgaris subsp.asiatica
ウツボグサは北海道~九州に分布するシソ科の多年草。草丈10~30cmほどで、夏に紫色の小さな花を穂状に咲かせます。この花穂の形が、矢を入れる武具の「靫」に似ていることから、その名があるそうです。靫には色々な形があるのですが、円筒形で背中に背負うものが、どうやらこのウツボグサの花序に似ているようです。
ただ………言う程似てないのでは?
ネットで「靫」の絵や写真を色々見てみた結論としては、そんな感じ。
花の色には濃淡の変化があり、写真の花はやや淡色のもの。高山に生えるものは花色が濃いものが多いようです。
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ウツボグサは、花が咲くとすぐに花茎が枯れてしまうことから「夏枯草」の別名があります。花茎が枯れると、株元から長い茎が出て地面を這い、茎の先から葉と根を出して、新しい株になります。この殖え方は、以前ご紹介したホタルカズラと良く似ています。
また、ウツボグサは漢方薬としても知られ、煎じたものは利尿や消炎の薬効があるとされます。新芽や花は山菜としても食べられるそうです。
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ウツボグサが人里近くで減ってしまったのは、草刈りで維持される半自然の草地が減ってしまったからだと思われます。こうした環境に生えていた種のうち、スミレやクサボケなどは河川堤防の草地などに新たな生育場所を見出しましたが、ウツボグサはそこまでの強さを持ち合わせていなかったようです。
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子供の頃、家の近くに溜め池があり、よく遊びに行ったのですが、その途中の道には、夏になるとウツボグサが沢山咲いていたのを思い出しました。
そんな感じの場所で、また花を見てみたいものです。




