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あてどない植物記  作者: 蘭鍾馗


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【No.56】コスモポリタン2 ヤナギラン

 何だか映画の続編みたいですが。


ヤナギラン(アカバナ科)

Chamaenerion angustfolium

挿絵(By みてみん)


 ヤナギランです。


 ブナ帯~亜高山帯の、標高の高い山の草地や崩壊地などに生育し、7~8月頃に赤紫色の花を咲かせます。群生することが多いので、開花期には見事なお花畑となります。

 ヤナギランが属するアカバナ科は、外来種のマツヨイグサの仲間を除けば、1cm以下の小さな花を咲かせる種ばかりですが、ヤナギランの花は径3cm程と大きい。花も穂になって咲くので、豪華な感じがします。


 生育環境は、崩壊で出来た裸地などで、他の植物がまだ生えていない場所にいち早く進入して繁殖します。前回登場したタニウツギ等とおなじ「先駆植物パイオニアプランツ」です。

 高い山に登ると、山小屋周辺の礫地や崩壊斜面等で良く見られます。また、日本では余り見ませんが、海外では山火事の跡に良く生えてくるため「Fire weed」とも呼ばれます。


 いずれにせよ、生育環境は一時的に出来た不安定な立地で、環境が安定してくると他の植物に生育場所を明け渡し、自身はまた何処かの崩壊裸地などを探して渡り歩く「ボヘミアン」でもあります。


 そして、パイオニア、ボヘミアンに次ぐ三つ目の「二つ名」が「コスモポリタン」。前にネジバナの回で出てきたあれ。二つ以上の大陸に分布する汎存種、というやつです。ヤナギランの分布は、北半球のアジア、ヨーロッパ、北米大陸の寒帯~温帯にかけての地域。北極圏を取り囲むように分布するので、「周極分布」とも言われます。


 花言葉は、「一心不乱」「焦点」などだそうです。


 写真は、長野県の八千穂高原自然園で撮ったもの。この場所、実は最近深刻なシカの食害を受けていて、ヤナギランはシカ除けのネットで保護された場所でなんとか咲いていました。



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