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あてどない植物記  作者: 蘭鍾馗


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【inntermission】晩春の花拾遺 タニウツギ、ヤマツツジ、ハマヒルガオ

 何で今頃晩春の花?


 はい、そう思いますよね。私としても、このネタは5月にやりたかったんですが、諸般の事情によりスルーしてしまっていたので、ここで三種まとめてご紹介しようかと。

 実は、いまPCが使えない状況でして、この文章はスマホでポチポチやっています。要は、「みてみん」に新しい写真をUPするのが難しい状況なんですね。


 まあ、言い訳はこのくらいにしときましょ。

 まずはこの花、タニウツギから。


タニウツギ(スイカズラ科)

weigela hortensis

挿絵(By みてみん)


 東北地方の日本海側、北陸、山陰地方の谷沿いの斜面などに生えます。群生することが多く、花時には山の斜面がピンク色に染まって大変きれいなんですが、実はこの花が咲く場所は崩れやすい斜面や雪崩が多発する場所。崩壊などで裸地になった場所や、雪崩で大きな木が生えられない場所等に入り込んで成長する、いわゆる「先駆樹種パイオニアプランツ」です。

 なので、この花が数多く咲く谷は、崩壊や雪崩の危険がある可能性が高いのです。

 綺麗な花の咲く谷は、要注意です。


 ◇


 次は、ヤマツツジ。


ヤマツツジ(ツツジ科)

Rhododendron kaempferi

挿絵(By みてみん)


 里山の林縁部などに良く生えています。普段は目立ちませんが、花時には新緑の中で明るい朱色の花が映えて大変綺麗です。

 花色には若干の変異があり、花色の濃いものや薄いものが見られます。

 実は、ヤマツツジは、「半落葉性」という少し変わった性質を持っています。

 ヤマツツジの葉は、年二回、春と夏に出ます。春に出る葉は大きく、葉先が尖っています。この葉は秋に落葉します。一方、夏に出る葉は小さく、葉先が丸い。この夏葉は、秋に一部が落葉しますが、一部は枝についたまま越冬します。

 どうしてこんな葉の出方をするのかはわかりませんが、もしかしたら、今、北へ進出している途上で、寒い気候に適応するため、落葉する性質を獲得している最中なのかも知れません。


 ◇


 最後はハマヒルガオです。


ハマヒルガオ(ヒルガオ科)

calystegia soldanella

挿絵(By みてみん)


 砂浜に咲くヒルガオの仲間。ヒルガオよりも花色が濃く、花の白い筋がよりはっきりしています。葉は丸い形で厚く、光沢があります。

 なんとなく夏の花のようなイメージがありますが、実は開花期は5月。まあ、あんまり暑いと虫も飛びませんから、晩春の気候のいいうちに咲かせておこう、といった判断なんでしょうかね。実は、ハマヒルガオだけでなく、海浜植物で5月頃に花を咲かせる種は、意外と多いのです。

 茎はツル状で砂の上を這います。普通物に巻き付いて登ったりすることはありませんが、私は一度、ヨシの中に生えているハマヒルガオが、ヨシの茎に巻き付いて登っているのを見たことがあります。ツル植物としての性質を完全には失っていないようです。

 昔、千葉県の長生村の海岸に群生地がありましたが、東日本大震災の津波で流されてしまったようです。今、どうなってるかな。


 ◇


 以上、後れ馳せながらの、晩春の花の話でした。




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