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あてどない植物記  作者: 蘭鍾馗


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【No.55】シリーズ可哀そうな名前① クサギ

このシリーズは、「スミレの話」みたいに連続で書くのではなく、思い出した時に不定期で載せようかと思います。

クサギ(シソ科)

Clerodendrum trichotomum

挿絵(By みてみん)


 クサギです。漢字で書くと「臭木」。


 葉を揉むと独特の臭いがします。それでこういう名前が付いたのですが、正直、私はこれをそんなに臭いとは思いません。

 どんな臭いかって?うーん表現が難しい。何かの薬のような感じ。「カメムシの臭い」という表現をする人もいますが、私はそんなにカメムシには似ていないと思います。でもまあ、言いたいことはわかる、みたいな。それにしても、「臭木」なんて名前をつけるほどかなあ。

 若い葉は食用になり、おひたしや炊き込みご飯にするとおいしいとか。少し苦みがあるそうです。


 クサギは、伐採跡や崩壊地などの裸地にいち早く入り込んで成長する、いわゆる「先駆植物パイオニア・プランツ」です。造成地や工事現場なんかでも良く見かけます。

 花は冒頭の写真のとおり。赤みを帯びた大きな萼片の中から、五弁の白い花を咲かせます。なかなか美しい花で、欧米では庭木として植えられるそうです。また、花には甘い香りがあります。この香り、実はヤマユリとそっくりな香りです。


 花は普通白ですが、私は一度だけ淡紅色の花を咲かせる個体を見た事があります。その時はカメラがもう壊れかけていて、妙なノイズが入った写真になってしまいましたが、淡紅色の花を見たのはこれ一度きりです。カメラはこの後速攻で買い換えましたが。


<淡紅色花を咲かせる個体>

挿絵(By みてみん)


 それで、秋に成る実がまたきれいなんです。実が熟すとつぼんでいた萼片が開き、濃い赤に染まります。そして、中から青色の実が出てくる。見方によっては花よりきれいかも知れません。


<クサギの実>

挿絵(By みてみん)


 青い色は、人間にとっては「食欲減退色」で美味しそうには見えませんが、鳥の目にはまた違って見えるのかも知れません。裸地になった所にすぐ侵入して生えるということは、この青い実、鳥には人気があるようです。


 というわけで。


 なかなか美しい木です。花にはヤマユリのような甘い香りすらあるというのに、なんで「臭木」なんて名前がつくんですかねえ。


 可哀そうじゃないですか。

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― 新着の感想 ―
昔の人のネーミングセンス、ほんとに、何とかならなかったのか、と思うことがしばしば; オオイヌフグリ系統の名称は改名してほしい、切実に。美しい風景が、一気に淫靡な風景になるのはノーサンキューです。 逆に…
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