【No.52】これなら大丈夫 ウバユリ
前にNo.2 ヤマユリの所で、「花が重い割に茎が細くて、花が咲くと重さで茎がしなだれてしまう」みたいなことを書きましたけど、中にはこの辺きっちり対策してる奴もいまして。
ウバユリ(ユリ科)
Cardiocrinum cordatum
ウバユリです。
花は見ての通りユリっぽい。テッポウユリに似ているけど、ちょっとひしゃげた感じ。花は長さ十数cmで、大きさも立派にユリ。甘い香りもあります。分布は関東・中部地方以西の本州と四国・九州。
でも、実は姿がちょっとばかりユリらしくない。こんな感じです。
<ウバユリの姿>
あれ、葉がなんかサトイモみたいに広い。
葉脈の走り方も、ユリみたいな平行脈じゃなくて、双子葉植物みたいな網状の葉脈を持っています。
葉も、茎の途中の一か所に集中して着く。
これらの特徴は、日陰の環境に適応するためだと思われます。実際、ウバユリの生える場所は、ヤマユリよりもやや暗くて湿った場所。
そして、注目すべきは茎の太さ。茎は短めで太さは太め。なので茎はまっすぐに立って安定感抜群。これなら大きな花を沢山咲かせても大丈夫でしょ。
ちなみにヤマユリの茎はこんな感じ。ウバユリに較べるとだいぶ細いのがわかります。
<ヤマユリの茎>
ウバユリという名は「花が咲く時に葉が枯れてしまって無いから、葉(歯)が無いにかけて姥百合の名がついた」なんて言われますが、実は開花時にも葉がついていることの方が多い。まあ、いい加減なもんですね。
この花、樹林の日陰に咲いていると、それなりに、というか結構目立ちます。ヤマユリに較べると地味で華やかさには欠けますが、山の花らしい雰囲気があって、私は好きですけどね。
このウバユリ、実はひとつの株は1回だけしか開花しません。
若いうちは地際に葉だけを出して光合成を行い、地下の球根に十分な栄養が溜まると、茎を伸ばして花を咲かせ、実をつけます。こうして一度開花した株は枯れてしまいます。
こういう生活史を持った植物のことを「一回開花型多年草」と呼びます。これの極端なやつが、あれです。ほら、数十年に一度開花して枯れるという「リュウゼツラン」。咲くと良くニュースで取り上げられますよね。
ちなみに、本州の中部以北と北海道には、ウバユリよりも大分大きくなる「オオウバユリ」が分布します。姿はこんな感じ。茎の高さは1.5~2m程にもなります。
<オオウバユリ>
これ、昔はアイヌの人々のごちそうだったんだとか。
花言葉?
調べてみました。あるんですねウバユリにも。
「威厳」、「無垢」、「純潔」
だそうです。威厳は何か分かるなあ。




