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あてどない植物記  作者: 蘭鍾馗


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【No.49】ソウなんです イチヤクソウの仲間

 No.41で、とても小さくて名前に「~ソウ」がつくのに低木、っていうのを紹介しましたが、今回はその同じ仲間で、本当に草本のやつを。イチヤクソウの仲間です。


 花期は丁度今頃。やや乾いた樹林の林床に生えます。この仲間も、ウメガサソウと同じく共生菌がいて、種子の発芽や個体の生長を助けます。なので、この仲間は全部栽培困難種。

 以前はイチヤクソウ科として独立していましたが、現在のAPG分類ではツツジ科に統合されています。ツツジ科はもともと木本だけのグループだったんですが、イチヤクソウ科が統合されたことにより、草本の種も含むグループになりました。ソウなんですよ。


イチヤクソウ(ツツジ科)

Pyrola japonica

挿絵(By みてみん)


 まずはイチヤクソウから。低山でみかけるのはほとんどがこの種。

 はい、また写真が良くないですね。花と葉を一枚の写真に写そうとした結果こうなりました。

 花だけアップにすると、こんな。雌蕊が長くて先が曲がっているのと、雄蕊が上の方に極端に寄っているのが特徴。近くで見ると、意外と変な花です。


<イチヤクソウの花>

挿絵(By みてみん)


 イチヤクソウは漢字で書くと「一薬草」。その名の通り薬草です。利尿、強壮、強心、消炎、鎮痛、止血等に効くとされています。6月頃、梅を思わせる丸い白い花が、穂になって咲きます。

 いかにも「山の花」といった風情があります。6月っぽくもあるかな。


 ◇


 これ以外の種は、だいたい低山帯上部~亜高山帯の、ちょっと高い山に生えます。関東だと800m以上くらいでしょうか。


コバノイチヤクソウ(ツツジ科)

Pyrola alpina

挿絵(By みてみん)


 学名は「高山の」という意味。その名の通り1,600mを超えるような亜高山帯に生え、イチヤクソウのように低山でみかけることはありません。イチヤクソウとの違いは葉が小さく、葉柄が赤味を帯びないこと。


ジンヨウイチヤクソウ(ツツジ科)

Pyrola renifolia

挿絵(By みてみん)


 こちらはさらに小さい。特徴は葉がやや横長で、腎臓を思わせるような形をしていること。低山にも生えます。


 そして、花がピンク色で、この仲間で一番派手なのがこれ。ベニバナイチヤクソウ。


ベニバナイチヤクソウ(ツツジ科)

Pyrola asarifolia Michx. subsp. incarnata

挿絵(By みてみん)


 学名のincarnataは、ラテン語で「人の姿をした」「肉体をもった」みたいな意味なのですが、多分「肉色の」くらいの意味だと思います。花の色のことですね。上の写真の株はただのピンクにしか見えませんが、濃色の個体になると、まあ、ちょっとは肉色に見えるかな。


<肉色?のベニバナイチヤクソウ>

挿絵(By みてみん)


 このベニバナイチヤクソウ、この仲間で唯一群生する性質があり、カラマツ植林の林床で良く大きな群落を作ります。満開の時は、それは見事です。

 これも栽培困難種ですが、この種に限ってはカラマツと一緒に植えると育つ、という話もあります。真偽は未確認ですけど。


 ウメガサソウの仲間も含めて、この仲間はほぼ全ての種が、梅の様な形の花を下向きに咲かせるのが共通点。どれもなかなか上品な花です。


 ◇


 ベニバナイチヤクソウは、長野県の「八千穂高原自然園」に行くと、カラマツ林の下にピンクの花の群生が見られます。丁度今頃ですね。湿地にはサクラソウの仲間のクリンソウなんかも咲いていて見事ですよ。

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