【No.48】黒い花 ミツバアケビ
植物の花は、いろんな色と形をしています。
花の色や形は主に、受粉を行う送粉者の種類や体の大きさ等に合わせて決まってきます。
形については、下向きに咲いたり、花びらをこじ開けないといけない花はハナバチ類が、小さな花が円盤のように平らに並ぶセリ科のような花はハナアブ類が主に花粉を運びます。また、蜜をためる「距」をもつ種類は、送粉者の口吻の長さや形に合わせた距をもっています。これには他種との交雑を防ぐ役割もあります。ちょうどぴったりの長さの口吻を持った虫だけに、花粉が着くようにしているのです。
色については、昆虫が特に好む色というのがあって、それは白や黄色など。そういった昆虫が好む色の花を咲かせることで送粉者を誘引します。複数の車でキャンプなどに行くと、黄色い車にだけ虫がたかる、なんていうこともよくあります。
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で、表題のミツバアケビなんですが、これが実は、黒い花を咲かせます。
花房の根元にある大きいのが雌花で、先の方にある小さいのが雄花。
ミツバアケビ(アケビ科)
Akebia trifoliata
これ、光の具合もあるんですが、本当にこんな色に見えます。
ごく濃い紫色ですが、このとおり、黒と言っても間違いとは言えない位の濃い紫。
黒は、普通に考えると一番目立たない色。なんでこんな色の花を咲かせるんでしょう。
調べてみました。
出ません!
えー、誰も調べてないの?
ミツバアケビの送粉者については、「鳥か昆虫」までしかわかりませんでした。
でも、海外(どこの国だったか忘れました)には、夜咲く花なのに黒い花を咲かせる植物(名前思い出せません)があるそうです。暗闇にまぎれて絶対わかんないだろ、と思うのですが、これ実は、月明かりに照らされて、シルエットになって浮かび上がることを狙っており、コウモリの一種を誘引して受粉させるのだそうです。
まあそう言われれば、葉の茂みの中に咲くミツバアケビの黒い花は、確かに目立つかも。
あと、虫には見える紫外線で見ると、また別の色に見えるのかも知れませんが。
ちなみに、逆光で撮影すると、花びらに光が透けて、こんな色になります。まあ、これなら虫来るか。
<逆光のミツバアケビの花>
黒く見えるのは、花びらの地色の緑か黄色に、紫が重なるため。色の減算混合の三原色である赤・青・黄色が揃ってしまい、黒に近い色になるわけです。逆光だとそれが分かりますね。
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ミツバアケビの花は、甘い香りがします。
でも、香る時間帯があるらしく、いい匂いがする時と、全く匂いがしない時があります。
植物としては結構なコストをかけて香り成分を作っていると思うので、虫が活動する時間帯に合わせて香りを出しているのかも知れません。
実がまた美味しいんですけど、残念ながら写真がありません。
なかなか手の届く高さに実らないんで、手に入る機会が少ないですけどね。甘くて香りの良い実は、山の果物のなかでは、私は三本の指に入ると思っています。ちなみに残り二つはサルナシとヤマブドウ。個人の感想ですけど。
しかしフルーツとしては、種が多いのが難点。果肉の七割くらいは種じゃないでしょうか。デラウェアみたいにホルモン剤で処理して「種なしアケビ」とか作れないのかな。
実の皮や新芽は山菜として食べられるそうですが、私は食べたことありません。
一度、皮ごと焼酎につけて果実酒を作ってみたことがあるんですが、皮の苦みが勝ちすぎて、美味しい酒にはなりませんでした。皮は素直に山菜として食べた方がいいみたいです。




