【No.47】栽培種の起源 ヤマアジサイ、ガクアジサイ他
カシワバアジサイとか、アナベルとか、今でこそ色々な種が揃うアジサイですが、昔は日本の在来種を改良したアジサイと、それが欧米に渡って改良され、逆輸入された西洋アジサイくらいしかありませんでした。その元になったのは、以下の3種。
ガクアジサイ(アジサイ科)
Hydrangea macrophylla f. normalis
ガクアジサイは、関東より南の海辺の樹林に生える落葉低木です。色は白に近いものが多く、栽培種のような青い花は稀です。伊豆の城ケ崎には色の濃いものが自生していたと言われます。写真は千葉県のもの。
ヤマアジサイ(アジサイ科)
ヤマアジサイは、関東以西から九州の太平洋側に分布します。花色の変異は大きいのですが、やはり白っぽいものが多いようです。
これに対して、エゾアジサイは、ヤマアジサイよりも色の濃いものが多く、特に澄んだ青色の個体は、山の中で見つけると、はっとするような美しさがあります。
ヤマアジサイと対照的に京都以北の日本海側に分布します。
エゾアジサイ(アジサイ科)
Hydrangea serrata var. yesoensis
もし、お宅にアジサイをお持ちでしたら、葉を見てください。大人の手のひら程の大きさで、表面につやがあれば、それはガクアジサイを中心に交配されたもの。葉がそれより二回り位小さく、表面につやが見られなければ、ヤマアジサイかエゾアジサイを中心に交配されたものです。
アジサイの花びらのように見えるものは、萼が大きくなったもの。装飾花と呼ばれます。これは遠くにいる虫を呼びよせるための看板で、実際に種子をつける花は、その中心に沢山咲いている小さな紫色のもの。装飾花が小さな本来の花を囲むようにして咲くことから、「額縁のようだ」というのでこの名があります。野生個体の中には、稀にこの中心の小さな花が装飾花に変化したものがあり、そうしたものを選抜・交配してできたのが、栽培種のアジサイです。
この「ガクアジサイ型」とも言える花序の形は、アジサイの仲間の基本であり、タマアジサイやノリウツギ等、他のアジサイの仲間も、多くの種は同じような花序を作って花を咲かせます。
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まあ、そうは言っても、何事にも例外はつきもの。中にはこんな種もあります。
コアジサイ(アジサイ科)
Hydrangea hirta
これは装飾花がありません。小さな低木で、50cm位の大きさで咲きます。図鑑には2mくらいになると書かれていますが、そこまで大きなものはなかなか見ません。刈り取りに強いので、下草刈りがされる雑木林の林床等で良く増えます。花序の直径は10cmないくらい。花序が丸いせいか、装飾花がなくても、ちゃんとアジサイの仲間に見えます。
また、こんな変わりものも。
ギンバイソウ(アジサイ科)
Deinanthe bifida
これ、アジサイ科ですが厳密にはアジサイ属ではないので、アジサイの仲間からは少し外れるのですが、見ての通り花が大きい。でも、写真では一番下の蕾に隠れるようにしてちょっとだけ写っていますが、本来の花の半分位の小さな装飾花が少数つきます。ということは、はじめは装飾花を持っていたものが、途中で装飾花に頼るのをやめて、本来の花を大型化させる戦略に変更したことになります。何が理由かはわかりませんが、いわゆる「一周回って」というやつですね。
このほか、秋咲きで、花序が玉のような苞から出てくるタマアジサイや、木にならない草本のクサアジサイ等、アジサイの仲間は結構色々な種があります。
以上、アジサイの話でした。




