【No.44】もてなしの花 ヤマシャクヤク
ヤマシャクヤク(ボタン科) Paeonia japonica
ヤマシャクヤクです。
草丈30cmくらい。花の直径は3~4cmくらいでしょうか。栽培種のシャクヤクのイメージを持っていると、まず小さいことに驚きます。葉は複葉になっていて、言われるとシャクヤクに似ています。花は一本の茎にひとつだけ。ぼんぼりの様な丸い花の中に、先端が赤い雌蕊が覗いていて、地味ですが大変上品な花です。
この花、開花期間が大変短い。
大体、開花から2~3日で散ってしまうようです。保って4日。5日は咲いていないでしょう。株の力が足りないと、開かずに散ってしまうこともあります。
私も、山で何度か見かけたことがありますが、まだ運よく開花中の株に出会ったことがない。未開花か、散っているかどちらか。ちなみに写真の花は、福島県水原のクマガイソウ自生地で撮ったもの。半ば栽培されているものです。
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世に、茶花というものがあります。
茶席で客人をもてなすために、茶室の床に飾られる花です。茶花は派手な花や珍しい花よりも、その季節の、その時しか見ることの出来ない花が、良いものとされるそうです。
このヤマシャクヤクは、前述のように開花期間が短い。なので、茶席に合わせて咲かせることが難しいということで、最高の茶花のひとつに数えられるのだそうです。
ヤマシャクヤクの花は、一本の茎にひとつだけ。これを切り花にしてしまうと、その株は葉をほとんど失うことになるので、翌年は多分咲かなくなるでしょう。そう考えると、私なんかは、これを切り花にするのは大変勿体ないと思ってしまうのですが、まあ、それが「もてなし」というものなのだと言われれば、そうなのでしょう。
幸い、栽培はそれほど難しくないそうなので、庭で育てたヤマシャクヤクを、開花のタイミングを読んで茶席に一本活け、大事な客人をもてなすというのは、なかなか風流で良いかも知れません。
ちなみに、近縁種にベニバナヤマシャクヤクというものがあります。
ベニバナヤマシャクヤク(ボタン科) Paeonia obovata
これも開花してすぐに散ってしまうので、野生では開花したものを見たことがありません。写真の株は長野の八千穂高原自然園という所に咲いていたもので、やはり半栽培品です。
自生する環境は、どちらも樹林の林床。下生えの少ない崩れやすい斜面などに多いようです。昔は丹沢などに群生地があったと聞きますが、今は見られなくなってしまったようです。




