【No.4】春咲きリンドウの小さな世界 ハルリンドウ、フデリンドウ、コケリンドウ
私が長年撮り溜めていた野生植物の写真の中から、適当にピックアップして、その種にまつわる思い出などを文章にして、一種ずつ紹介していきます。
蘭鍾馗の、まじめな方のエッセイです。
リンドウ、と言えば秋の花。
多くの花があらかた咲き終わった林縁の叢に、きりっと澄んだ青紫の花を咲かせる草。
でも、春に咲くリンドウもあります。これから紹介する3種が、その代表的な種。
春に咲くリンドウは、どれも寿命が短く、越年草(冬に生長する一年草)、または二年草(種子から芽生えて二年目に花を咲かせて枯れる草)です。
しかも、みんな背が低い、背丈は2~15cmくらい。
花も小さい。一番大きなハルリンドウでもせいぜい径3cmくらい。コケリンドウに至っては1cmないかも知れない。そんな小さな春咲きリンドウを、一種ずつ見ていきましょう。
1.ハルリンドウ(リンドウ科)Gentiana thunbergii (G.Don) Griseb. var. thunbergii
まずは、一番大きなのがこれ。
○草丈:5~15cm
○花径:2~3cm。五百円玉くらい。
湿った草地や湿原に生えます。株の根元には大きな葉が4枚、地面に接するようについていて、そこから数本花茎を伸ばして、1本にひとつずつ、青紫の花を咲かせます。生育環境が湿った草地や湿原ですから、身近に見る機会があまりない種です。この写真は、千葉県の某所で撮影したものです。
2.フデリンドウ(リンドウ科)Gentiana zollingeri Fawc.
二番目に大きいのがこれ。
○草丈:5~10cm
○花径:2~2.5cm。百円玉か十円玉くらい。
山地の明るい林床等に生えます。株の根元にはハルリンドウのような大きな葉は無く、短い茎が1本立ち上がって、その先端に1~十数個の花をつけます。色は淡青紫~青紫。春咲きリンドウの中では最も普通にみられる種で、山に登る人は、見たことがあるという人が多いかも知れません。なお、フデリンドウの種子の発芽には菌類が関与しているらしく、普通に種を播いてもまず発芽しません。これも千葉県の某所で撮影したもの。
3.コケリンドウ(リンドウ科)Gentiana squarrosa Ledeb.
で、一番小さいのがこれ。
○草丈:3~10cm
○花径:1cm弱。ワイシャツのボタンくらい。
日当たりのよい草地や芝の中などに生えます。ハルリンドウと同じく、株の根元には大きな葉が4枚、地面に接するようについていて、そこから数本花茎を伸ばして、1本にひとつずつ花を咲かせます。色はハルリンドウやフデリンドウよりも薄い青紫で、ほぼ水色に見えます。この種は最も背が低く、花や実が、芝刈りからある程度逃れられるため、3種の中で唯一芝生の中に生えることができます。これは栃木県の某所で撮影しました。