【No.41】ソウじゃないんです ウメガサソウとオオウメガサソウ
ウメガサソウ(ツツジ科) Chimaphila japonica
ウメガサソウです。その名の通り、梅の花を傘代わりに差して立っているような、そんな花。
背丈は5~10cmくらい。花の直径はまあ1cmくらいでしょうか。花期は6~7月の初夏。
分布は北海道~九州、樺太、千島列島、朝鮮半島、中国大陸の中部・東北部あたり。乾いた樹林の林縁~林床に生える、大変小さな常緑小低木です。
「え、草じゃないの?」
名前に「ソウ」とつきますけど、小さいながら茎は木質化しますから、立派に樹木です。
この木、ラン等と同じように、共生する菌類がいて、樹木と共生する菌類から栄養をもらって生きています。でも、緑の葉も持っているので、キンランやギンランと同じ「部分的菌従属栄養植物」になります。種子も非常に細かく、ランの種子によく似ています。おそらくランと同じように、胚乳を持たず、菌から栄養をもらって発芽するしくみになっていると思われます。
しかし、これもヒメスミレと同じで、小さい花が下を向いて咲くので、花の中を写真に写すのが非常に難しいというか面倒くさい。
大き目の株で、花が終わりかけの頃になってくると、花が横を向くので撮りやすくなります。
<花が終わりかけの大株>
まあでも、出来れば開花したての新鮮な花を撮りたいですけどね。
葉は「テイカカズラ」というキョウチクトウ科のつる植物の芽生えによく似ており、花がないと見逃しがちな植物です。
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ところで、ウメガサソウの近縁種に「オオウメガサソウ」というのがあります。
オオウメガサソウ(ツツジ科) Chimaphila umbellata
名前のとおりウメガサソウよりも大型で、ピンクの花が数多くつきます。でも下を向いて咲くのは同じ。
分布は北海道、本州(茨城県、岩手県、青森県)の太平洋側で、基本的に北海道や東北など寒い所に生えるのですが、例外的に1箇所だけ飛び離れた自生地があります。茨城県の「国営ひたち海浜公園」です。ここの自生地は、普段は公開されていないのですが、開花期の6月にはオオウメガサソウを観察するツアーがあり、これに参加すると観ることが出来ます。
オオウメガサソウは、環境省のレッドリストで準絶滅危惧(NT)。なお、準絶滅危惧の定義は、「生息状況の推移から見て、種の存続への圧迫が強まっていると判断されるもの」とされています。
ただし、ひたち海浜公園の自生地は、他の自生地から飛び離れた位置にある孤立した自生地で、日本では南限に当たりますから、レッドデータのランク以上に貴重なものと考えるべきでしょう。
ちなみに、これもやっぱり樹木。「ソウ」じゃないんですよ。




