【No.38】スミレの話⑦ 林縁性のスミレ アカネスミレ、マルバスミレ他
報告書の書き方みたいな話で、たまに若い人に言うことがあります。
「安易に新しい言葉を作るな」って。
話の都合上、仕方なく耳慣れない新しい言葉を作って使うことは、ないわけじゃないけれども、それは出来るだけ避けた方がいい。難しい言葉もそう。なるべく普段使っている言葉で説明すべき、ということですね。で、もしどうしても新しい言葉を作って使う必要がある場合は、注書きかなんかで必ず説明をして、言葉の定義をしてから使うこと。
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そんなことを人には言っておいて何なんですが、今回はちょっと新しい言葉を使わせて下さい。
「林縁性スミレ」って言葉です。
「林縁」というのは、樹林の縁にあり、草地などの開けた環境と接する部分のこと。これはあるんです。林縁という言葉。ただ、「林縁性スミレ」という言葉は、普通使われない。私が表現に困って作った「新しい言葉」ですね。文字通り、林縁に生えるスミレ。林縁という環境で特に多くみられるスミレのことです。
じゃあ、「林縁性スミレ」ってどんなのがあるの?
アカネスミレ(スミレ科) Viola phalacrocarpa
例えばこれ。濃い赤紫色の花が印象的なスミレです。基本明るい所が好きですが、広い草地みたいな所には出てこない。かと言って樹林の林床には見られない。いろいろ考えると「林縁性」としか言いようがない。
でも、こういう所に生えるスミレ、結構多い。もしかしたらこれがスミレの主流かもしれない、なんて気がしてくるくらい。
こんなのもあります。
マルバスミレ(スミレ科) Viola keiskei
白くてふくよかな感じの花が特徴。丸顔系美人ですね。これも林縁部でよく見るスミレです。開けた草地や林床でみることはまずありません。
あと、こんなのもあります。
ナガハシスミレ(スミレ科) Viola rostrata
これ、葉や茎はタチツボスミレにそっくり。タチツボスミレの回で「きりがないので」って省略したタチツボスミレの近縁種のひとつです。蜜を貯める「距」がひょろっと長く、上に伸びるのが特徴。「テングスミレ」の別名もあります。タチツボスミレは林縁にも生えますが、林床や畑の脇の草地なんかでも結構見ます。ところが、ナガハシスミレは林縁以外の所ではなかなか見られません。
こういうのも。
シハイスミレ(スミレ科) Viola violacea
これも明るい所が好きですが、開けた草地にはまず出てこない。明るい所が好きなので雑木林の林床は暗すぎて生育できません。昔はアカマツ林の林床によく生えていたそうです。今は松枯れでアカマツ林が減ってしまいましたから、同じ環境を雑木林の林縁部に求めたのかも知れません。
花は普通のスミレとヒメスミレのちょうど中間くらいの大きさ。明るい紫色の花は、小さいながら存在感があります。
他にも沢山あります。「林縁性スミレ」。
ということは、色々なスミレが見たかったら、まずは林縁部を探せ、ということになりますかね。
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スミレの話、今回で一応終了です。
紹介しきれなかった種もまだあるのですが、それはそのうち、個別に登場させましょう。
では。




