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あてどない植物記  作者: 蘭鍾馗


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【No.34】スミレの話③ 本当に小さいのはどれ? ヒメスミレ

ヒメスミレ(スミレ科) Viola inconspicua subsp. nagasakiensis

挿絵(By みてみん)


 ヒメスミレです。

 

 あーまた花の芯が写っていませんね。駄目じゃん。

 でもねえ、難しいんですよこの花の芯を写すの。あまりにも小さすぎて、カメラを花の真正面に構えること自体が難しい。


 大きさ?

 周りに写っているクローバーの葉っぱから想像してみてください。


 背の高さは5cmないくらい。花の直径は1cmちょっと。今まで出て来た花の中では、サイズ的にはコケリンドウが一番近いかな。身近にみられるスミレの中では一番小さな種。芝生の中や道端のアスファルトの隙間、あと墓地なんかに意外と多くみられます。


 ちなみに、タンポポと並べてみるとこう。

 隣に咲いているのはヒマワリじゃないですからね。


<タンポポとヒメスミレ>

挿絵(By みてみん)


 あっ、一枚だけありました。花の正面から撮れてるやつ。こんな感じです。


<正面から写したヒメスミレ>

挿絵(By みてみん) 


 ◇

 

 さて。

 

 植物のネーミングでは、一般に「小さい」ことを意味する言葉として、コ、ヒメ、ヒナ、マメ、コケあたりが良く使われます。スミレ科だと、コスミレ、ヒメスミレ、ヒナスミレ、コケスミレがあります。このうち本当に小さいのはこのヒメスミレと、あとはコケスミレだけ。コケスミレは屋久島固有種で、本当に苔サイズ。残念ながら写真はありません。

 コスミレなんて、こうですよ。普通のスミレと全く変わらない大きさです。葉なんかタチツボスミレより大きい。なんでコスミレって名前にしたのか不思議です。


<小さくないコスミレ>

挿絵(By みてみん)


 ちなみに、昆虫だと「小さい」を意味する言葉として、マメ、チビ、ケシ、コガタあたりが良く使われます。特に「ケシ」なんかは昆虫独特。要は「ケシの実」にたとえたもの。生き物のジャンルによってネーミングセンスに違いがあるのがちょっと面白い。


 ◇


 ヒメスミレ、小さい割には花色が濃く、なかなか美しい花を咲かせます。香りはありません。いやもしかしたら、香りがあっても嗅ぐのが困難で気付いてないだけかも知れませんが。葉も小さく、本当にスミレの縮小版のようです。


 ヒメスミレは、芝生によく入り込んで、時に大繁殖することがあります。花時には芝生がうっすらと紫色になるくらい。これくらい背が低いと、芝刈りの影響を受けずに種子をつけることができるんですね。

 だから、ネジバナと同じく、芝生愛好家からは嫌われているようですが。


 ヒメスミレが生えているのは、人里の近くだけ。人の気配がなくなるとヒメスミレもみられなくなります。そのため、古い時代に他の国から渡来してきた外来種(史前帰化種しぜんきかしゅと言います)だという説もあるようです。ヒガンバナなんかと同じですね。


 貴方の身の回りでも、多分咲いてるんじゃないかと思います。

  

 でもね、写真とるのは大変ですよ。















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