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あてどない植物記  作者: 蘭鍾馗


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【No.31】自転車操業です チゴユリ

チゴユリ(チゴユリ科) Disporum smilacinum

挿絵(By みてみん)


 チゴユリです。


 下草の少ない明るい雑木林の林床なんかに、良く群生しています。分布は日本全土、朝鮮半島、中国。

 春の雑木林を代表する花のひとつです。

 4~6月頃、十数cm程の茎の先に、ユリを小さくしたような白い花を一つだけ咲かせます。直径は2cmくらい。大きくても3cmはないかな。

 この姿が、ユリをミニチュアにしたみたいなので「稚児百合ちごゆり」と呼ばれます。


 ユリと名が付きますが、ユリ科ではなくチゴユリ科。もとはユリ科だったのですが、例の「新しい分類(APG分類)」でユリ科から分離した「チゴユリ科」に分類されます。

 これ、日本では「チゴユリ科」と呼ばれますが、日本以外では「イヌサフラン科」と呼ばれます。


「イヌサフラン?」


 聞いたことある人、結構いると思いますよ。ほら、毎年春になると「行者ニンニクと間違えて食べて中毒を起こした」ってニュースになる、あれ。

 ピンク色や白色の大きくてきれいな花が咲きます。園芸店では「コルチカム」と呼ばれて売られている、大きなジャガイモ位の球根。春に葉が出る前に花だけ秋に咲くので、「机の上に置いておくだけで花が咲く」なんて謳い文句で良く売られています。そう、あれ。あれと同じ科。


 同じ科の園芸植物、もう一つあります。グロリオサ。和名だと「キツネユリ」とか言われますが、園芸名としてはグロリオサの方が知名度高いでしょう。つる性で、赤い篝火みたいな花が下向きに咲きます。そう、あれ。あれと同じ科。


 びっくりしますよね。私も驚きました。APG分類は本当良くわからん。

 ちなみに、日本に自生する同じ科の植物としては、ホウチャクソウがあります。これ。


ホウチャクソウ(チゴユリ科) Disporum sessile

挿絵(By みてみん)


 日本産のチゴユリ科は、どれも本当に地味。



 ところで、チゴユリは「ユリ」と名が付きますが、地下にユリのような球根を持ちません。ちょっと太めの根と地下茎があるだけ。その年の葉が秋に枯れると、根元から長めの地下茎が出て、その先に来年の新しい芽が出来ます。そして、元の株は枯れてしまいます。

 なので、多年草ではあるけれども、ひとつの芽の寿命は一年限り。毎年秋に新しい芽を作っては枯れることを繰り返すので、まるで一年草みたいです。そこで、こういう育ち方をする植物を「疑似一年草ぎじいちねんそう」と呼びます。


 簡単に言うと「自転車操業の多年草」ということですね。


 林床にチゴユリが咲く雑木林は、背の高い下草が少ないので、他にもいろいろな花が咲くことが多いようです。小さくて下を向いて咲くので、ユリに似た愛らしい花の様子を観察するのはなかなか難しいのですが、花の終わりころになると、やや上を向いてきます。といっても「横向き」が精一杯ですが。


 花が終わると、小さな黒い実が成ります。

 誰が食べるんでしょうね。











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