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あてどない植物記  作者: 蘭鍾馗


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【No.29】拾えない実 クサボケ

クサボケ(バラ科) Chaenomeles japonica

挿絵(By みてみん)


 クサボケです。


 河川の堤防の草地や、樹林の林縁部などに生える落葉低木です。

 花は3~5月。栽培種のボケによく似た濃い朱色の花を咲かせます。


 低木なのに何故「クサボケ」と呼ばれるかというと、実はこの木、刈り取りに異常なほど強い。

 なので、毎年複数回草刈されるような背の低い草地の中でも生きていけます。

 草地に生える株は、写真のような10cm以下の低い背丈でも立派に開花します。

 一方、林縁部など、あまり草刈されない場所に生える株は、1m程度にまで大きくなり、こうなると栽培種のボケと変わりません。


 ちなみに、栽培種のボケは中国原産。主な違いは葉と花色にあります。葉の先端が尖っているのが栽培種のボケで、先端が丸いのがクサボケ。花色は、ボケが紅色なのに対し、クサボケは黄色が混じった朱色になります。ただし、品種によってはクサボケが交配されているものもあるので、そういう品種だと上記の違いはちょっとあいまいになります。


 クサボケの根元の土を掘ってみると、直径1cmくらいの地下茎(いや地下枝か?)が伸びています。長さはもしかしたら地上に出ている枝より長いかも知れない。ここに栄養分を貯めこんでいるので、地上の枝を地際まで刈り取られても、平気な顔をして、また枝を伸ばしてきます。


 河川の堤防なんかは、概ね年2回草刈が行われます。普通、年1回草刈をすると樹木は生育できなくなるのですが、クサボケは、地下茎に栄養を貯めこむことで、こうした環境でも育つことができます。


 埼玉県の荒川の中~上流部の堤防の一部には、このクサボケが沢山生えている所があります。でも、堤防の上の道から見ても、クサボケなんか咲いていないように見えます。

 ところが、堤防を下りて下から眺めると、朱色の花が沢山咲いている。上からだと、他の草に隠れて花が見えない。それくらい低い位置に花が咲きます。


 ということは、実も同じく低い位置につく。

 実が熟すのは10月頃。黄色いゴルフボール位の小さな実です。

 お、何かの実が落ちている。そう思って拾おうとすると、あれ?取れない。

 そりゃあそうです。落ちてるんじゃなくて、枝にしっかり着いてるんですから。「地面に成る梨みたいな実」ということで、「地梨じなし」という別名もあったりして。


<クサボケの実>

挿絵(By みてみん)


 まあ、それでも実が取れたとしましょう。

 実は、小さいながらカリンによく似た、甘い芳香があります。

 でも、香りにつられて齧ってみると、堅い。はっきり言って、木材です。

 味は、酸味が勝っていて、そんなに美味しいものじゃない。食べるとしたら、薄く切って砂糖で煮ると食べられるそうですが、それよりは果実酒にする方が一般的でしょう。果実酒にすると、酸味はやわらぎ、果実が持っていた甘味が前面に出てきます。なかなか美味しい果実酒になります。

 ただ、あの実が放つ魅力的な甘い香りは、果実酒にすると飛んでしまうことが多いようです。


 実には薬効があり、漢方では「和木瓜わもっか」と呼び、強壮、咳止め、利尿などに効果があるとか。


 それにしても、こんな堅い実を誰が食べるのか?

 これ、私の長年の疑問なんですが、まだ答えを得るに至っていません。

 ハタネズミあたりかなあ。タヌキも頑張れば食べられるかも。



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