表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あてどない植物記  作者: 蘭鍾馗


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

33/95

【Intermission】「新しい分類」って何?

 Intermissionです。

 これは、いつか書かなきゃなあと思っていたネタなんです。


 本編の方でも時々「新しい分類では~」なんて言葉が時々でてきます。何これ?と思った方、結構いらっしゃるんじゃないかと思います。

 なので、今回は、新しい「APG分類」の話をしようかと。


 ……あっそこブラウザ閉じないでお願い出来るだけ面白おかしくやりますから。


 



【1.APGって何?】


 そうですよね。まずはその話から。

 APGとは、「被子植物系統グループ」(Angiosperm Phylogeny Group) の略で、この新しい分類体系を作った植物学者のグループの名前です。この新しい分類体系のことを「APG分類」と呼びます。


【2.古い分類と何が違うの?】


 これは植物に限らないんですが、今までの分類は、花とか葉とか、植物の()()()()()()から分類していました。例えば、双葉が二枚出るから「双子葉植物そうしようしょくぶつ」、一枚だけのは「単子葉植物たんしようしょくぶつ」みたいに。

 これに対して、新しいAPG分類では、DNA解析により、遺伝子の違いから分類を行っています。


【3.どうやって?】


 まあこれは、あくまで仮説ではあるんですが。

 遺伝子は、細胞分裂や生殖のたびにコピーされて新しい世代に受け継がれるわけですが、これがコピーミスがそれなりの頻度で起きるらしく、年月が経つにつれ、少しずつ変化していきます。それが積み重なると、ついには別の種になってしまう(この辺は異論も大いにあると思いますが、とりあえず脇においといて)。

 

 ということは、「これ、進化の時計代わりに使えるんじゃね?」

 みたいなことを、誰かが言い出したわけですよ。


 例えば、DNAの配列一つが1万年で変化するとしましょう。そうすると、それぞれの種の間のDNAの違いを調べることで、この種とこの種は、共通の祖先から何万年前に分岐した、みたいな図が描けるわけです。それを根気よくひとつずつ調べていって、ついに植物全体の系統図を作り上げたわけです。


 植物全体、って言いましたけど、実は被子植物だけです。ほら、冒頭で説明したAPGの語源。

「被子植物系統グループ」ですからね。


 あと、調べたのはその種の遺伝子全体じゃなくて、葉緑体が持っている遺伝子を使ってます。本体は遺伝子多すぎて無理だったみたい。

 

 ちなみに、葉緑体は植物の細胞内にある器官のひとつで、元は独立した生物だったものが、植物の細胞内に取り込まれて共生をはじめたものと言われています。なので、葉緑体の中には、いまだに細胞核とは別個の独自の遺伝子があるのです。


 被子植物以外(裸子植物とシダ植物)は、環境省がAPGに準じた方法で新しいリストを作ってます。



【4.どんな感じになったの?】


(1)「科」はどうなったの?


 まずは、割と身近な「科」レベルの話をすると、大きく変化した「科」が幾つかあります。

 例えば「ユリ科」。これ、以下のように分裂しちゃいました。


・ショウジョウバカマやエンレイソウなんかは「シュロソウ科」に。

・チゴユリやホウチャクソウは「チゴユリ科」に。

・サルトリイバラやシオデ等、つる性のものは「シオデ科」に。

・ノビルやニラは、「ヒガンバナ科」に電撃移籍しちゃいました。

・ヤブカンゾウとかユウスゲ、ヘメロカリスの類は「ワスレグサ科」として独立しました。

・ツルボやスズランは「クサスギカズラ科」に。

・で、ホトトギスとかカタクリ、ヤマユリなんかは、「ユリ科」に残りました。


 まあ、こんな感じです。本当ついていくのが大変。



(2)「亜綱あこう」と「もく」の間がえらいことに!


 次に、「科」より上の分類群。これも色々変わったんですが、特に「亜綱」から「目」の間が大変なことになっちゃった。

 中学か高校の生物で習ったかと思うんですが、生物の分類は、大きい方から以下のようにグループ分けされます。


 <かいもんこうもくぞくしゅ


 で、植物の場合は、「こう」と「もく」の間に「亜綱あこう」があって、これが結構重要な分類群になります。そして、APGが扱った「被子植物ひししょくぶつ」というのは「亜綱あこう」レベルの分類群になります。「被子植物亜綱ひししょくぶつあこう」ですね。


 で、ですよ。


 古い分類だと、「亜綱あこう」の下はすぐ「もく」、そして「」と続くんですが、APGでは、この「亜綱あこう」と「もく」の間に、7つぐらい新しい分類群ができちゃった。こんな感じで。


①まず、名前のつけようのない古いグループ(正直、余りものです)とそれ以外に分けられた。

②古いグループを除いたものが、「モクレン類」と「それ以外」に分けられた。

③「それ以外」が、「単子葉類」と「真正双子葉類」と「それ以外」に分けられた。

④「真正双子葉類」が、「コア真正双子葉類」と「それ以外」に分けられた。

⑤「コア真正双子葉類」が「キク上群」、「バラ上群」、「それ以外」に分けられた。

⑥「キク上群」が「真正キク類」と「それ以外」に、「バラ上群」が「真正バラ類」と「それ以外」に分けられた。

⑦「真正キク類」が「シソ類」と「キク類」と「それ以外」に、「真正バラ類」が「マメ群」と「アオイ群」と「それ以外」に分けられた。


 そんなわけで、「亜綱あこう」と「もく」の間が7つ位の新しい分類群に仕分けされた。


 ここでミソなのは、だいたい毎回「それ以外」が出てくること。

 そうするとですね。なんかこう、トーナメントの対戦表みたいな、きれいな分かれ方にならないんですね。トーナメント戦のたとえでいうと、シード選手があまりにも多すぎて、どれが何回戦だかもはやわからない、みたいな。ほら、いきなり決勝戦の選手がいたりして。


<こんな感じですよ>

挿絵(By みてみん)


 このトーナメントの対戦表の「○回戦」というのが、実は「もく」とか「」みたいな分類群のレベルに相当するわけで、そうなると、これでは分類群の段階を、同レベル同士にきれいに仕分けることが、もう無理。


 というわけで、「亜綱あこう」と「もく」の間に7つくらい新しい分類群が入ったわけですが、それぞれの分類群の上下関係は、直接分岐しているもの以外は、もうわからない。というか、そういう考え方をする意味がもうないのかも知れない。


 いいんです。もう、このカオスのまんまで。

 だから、「真正キク類」とか、この辺の分類群の名前も、今のところ<仮称>です。

 なので、「類」の2つ後くらいに、また「類」が来たり、「群」の下にまた「群」が来たり……


 でも、これをエクセルとかで表に整理しようとすると、どれとどれが同列に並ぶの?みたいなことを、仮にでもいいから決めないと、分類群名を四角い表の中に整理できない。


 で、私はもうあきらめて、こうしちゃいました。


 これ、「あてどない植物記」の元ネタにしてる私の写真データベースなんですが。

挿絵(By みてみん)


 深い闇へようこそ。

 はい。これが今回のオチということで。すみませんが。


 

 最後まで読んでくださったあなた、ありがとうございました。






 












 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ