【No.28】夕闇に浮かぶ ウンラン
ウンラン(オオバコ科) Linaria japonica
ウンランです。漢字で書くと「海蘭」。
花が蘭に似て海辺に咲くことからきた名前ですが、写真で見た通り、蘭というよりは、あれでしょ。
金魚草。
属名はリナリア属。リナリアといえば姫金魚草。そう、ウンランはこの辺の草花の仲間です。昔はゴマノハグサ科でしたが、今はオオバコ科に分類されます。
ちなみに、リナリア属は日本にはこれ一種しか分布しません。分布は北海道と本州(日本海側は鳥取以北、太平洋側は千葉以北)、それと四国北部です。どちらかというと北の方に分布します。
日本国内でみかけるこれの仲間は、残りは全部外来種。特に最近よく見かけるのはマツバウンラン。芝生の中に良く生えてますね。
<マツバウンラン>
あと、ホソバウンランというのがあります。花色はウンランと似ていますが、こちらはだいぶ大きい。
<ホソバウンラン>
これらウンランの仲間は、普段は花びらが閉じていて、中にある雄蕊や雌蕊は見えません。ところが、ハナバチ類などが花に止まると、下の花びらが虫の体重で押し下げられて、その奥にある蜜が溜まった「距」にアクセスできるようになります。これも、前に出てきたエンゴサクの仲間と同じ作戦で、ある程度体重があって、遠くまで飛ぶハナバチ類だけが蜜を吸えるようになっているのです。
ウンランの生育環境は砂浜や砂丘。海浜植物です。背丈は数cm~数十cm。どちらかというと数cmの株を見かける機会の方が多いと思います。大変小さな草です。多くの株は砂の上を這うようにして生育しています。
冒頭の写真は富山県の黒部川河口にある、小さな砂浜に生えていたものです。
撮影したのは9月で、昼間はまだ日差しが強い。砂浜は太陽に照らされて白っぽく見えます。その中に咲いている淡黄色のウンランは、昼間の強い日差しの下では、砂の色に紛れて意外に目立たない。昆虫を呼ぶんだったら、もっとはっきりした色にすればいいのに、と思いながら見ていました。
ところが。
夕方になり、日が落ちて暗くなってくると、砂浜の砂は暗い灰色に沈んで見えるのに対して、ウンランの花は白っぽく、明るく見える。そうすると、灰色の砂を背景に、ウンランの花が浮かび上がって見えるようになるのです。
なので私は、ウンランは夜行性の昆虫によって花粉が運ばれるのかも知れないと思っています。
そんなこと書いてある文献は、今の所見たことないんですけどね。




