【前説】スプリング・エフェメラルとは?
はい。今回はひと休みじゃありません。
これから何回か、「スプリングエフェメラル」と呼ばれる植物について書こうと思っていて、それについてちょっと前もって説明しておいた方がいいかな?と思ったので。
なるべく簡単にいきます。読んでもらえるかなあ。読んでくださいね。
「スプリングエフェメラル(Spring ephemeral)」とは、英語で「春の儚い命」くらいの意味。早春の2~3月頃に芽を出して活動を開始し、6月までには地上部が枯れてしまう植物のことを、こう呼びます。
有名なのはカタクリ。里山の落葉樹林の林床で、3月頃に芽を出して花を咲かせ、5月には結実して葉が枯れて休眠してしまいます。また芽が出てくるのは翌年の3月。地上に出ているのはわずか3か月くらい。これがあたかも「春を告げに現れて、あっという間に消えてしまう儚い命のようだ」、ということでこう呼ばれるのですが、もちろん枯れてしまう訳ではなくて、地下に栄養を蓄えて休眠するだけです。
<スプリングエフェメラルの代表格、カタクリの群生>
でも、なんでそんなに地上に出ている期間が短いのか?それは、こうした植物の多くが落葉樹林に生えることと関係があります。
落葉樹は、冬の間は葉を落としているので、林床は明るい。5月になって新葉が成長すると、林床は日陰になります。もちろん日陰でも多くの低木や下草は光合成をして生長する訳ですが、背が低かったり、日陰にそんなに強くなかったりする植物にとっては、林床はなかなか厳しい環境で、他の草や低木との競争にあっさり負けてしまいます。
「だったら、落葉樹が芽吹く前に芽を出して光合成したらいいんじゃね?」というのが彼らの戦略。早春で気温が低いのだけちょっと我慢すれば、日の光は浴び放題。受粉が少し心配ですが、2月になれば活動している虫はそれなりに居ます。じゃあ、なんとかなるじゃん。
ただし、5月には落葉樹の葉が茂って林床が暗くなるので、それまでに光合成や開花・結実といった活動を終わらせないといけない。そんなわけで、スプリングエフェメラル達は、2~3月の早春に一斉に芽を出し、発芽後すぐに花を咲かせます。受粉に使える時間も短いし昆虫もまだ少ないので、その少ない昆虫を呼ぶために、花も大きくて派手な種類が多い。なので、スプリングエフェメラルが生える落葉樹林の春は、お花畑のようになります。
でも、早春に花を咲かせる種類でも、常緑だったり、葉が秋まで枯れずに残るものは「スプリングエフェメラル」とは呼びません。シュンランとかショウジョウバカマ、スミレの仲間なんかがそう。こういう種類は、もともと日陰に強いので、5月になってもあわてて葉を枯らして撤収する必要がないのです。
逆に、花が咲くのは8月頃だけれども、葉は早春に出て初夏には枯れてしまうキツネノカミソリのような種は「スプリングエフェメラル」と呼ばれます。花期以外の生活史が同じなので、カタクリなんかと同じ場所に良く生えています。こんな感じで。
カタクリの間に沢山生えている細長い葉が、全部キツネノカミソリです。
<カタクリと混生するキツネノカミソリ(葉だけ)>
なので、キツネノカミソリの話も、スプリングエフェメラル枠で書きますよ。
そんなこんなで、次回、フクジュソウとセツブンソウの話から、シリーズ始めたいと思います。




