【No.21】夏にはもう思い出 ミズバショウ
ミズバショウ(サトイモ科) Lysichiton camtschatcense
はい。今回は闇落ちしてない方。ミズバショウです。
ミズバショウといえば、あの歌。「夏の思い出」。
あの歌のイメージでミズバショウを「夏の花」と思っている人、結構いるかも知れません。
実は、早春の花です。ただ、標高が高く雪解けの遅い尾瀬ヶ原では、早春は6月。暦だと初夏ということで、俳句では「仲夏」(6月初旬~7月初旬)の季語になるんだそうですが。それじゃ尾瀬限定じゃん。
東北の低地なんかでは4月から咲きます。ちょっと標高の高い裏磐梯とか戸隠高原あたりだと5月初旬頃。ザゼンソウよりひと月遅れくらいですかね。
まあ、どう考えても春の花。夏の花にはなりません。
ミズバショウが咲く頃には、虫もある程度出てきますから、ザゼンソウのようにわざわざ暖かい「炬燵席」を用意したりはしません。花色も白。この白くて大きな仏炎苞の魅力でもって、虫を呼んで受粉させます。
ミズバショウは、漢字で書くと「水芭蕉」。
芭蕉は松尾さんではなくてバナナの仲間のほう。とても大きな葉をつけます。さすがにあれほど大きくはないのですが、ミズバショウも芭蕉のように大きな葉をつけて水辺に生えることから「水芭蕉」の名があります。
ちなみに、葉っぱはこんな。大きさは、左上に写っているモミジの葉っぱから想像してみてください。なんだか柔らかくて美味しそうではありますが、有毒だそうです。
<ミズバショウの葉>
参考までに、芭蕉の写真も載せときましょう。
<参考:芭蕉の葉はさすがにでかい>
たまに、「富栄養化で巨大化したミズバショウ」なんて記事をネットで見かけたりしますが、写真をみると大抵は普通サイズのやつが写っている。まあ、葉が出ている所を見ると、確かに開花期の可憐なイメージからはちょっと遠い感じがあって、「水質汚濁のせいじゃないか」と疑う気持ちは分かるけど、良く調べてから書いて欲しい。
しかし、ここまで大きくなる以上、ある程度の栄養は必要です。尾瀬なんかの自生地で見ていると、ミズバショウが生えるのは小さな流れの中やその両脇。こういう水は、周辺の山から流れてくるものなので、山の中を通る時に栄養塩類等を溶かし込んでやって来ます。だから、栄養が得られるこうした小さな流れのある場所を選んで生育します。
その一方で、ミズゴケが育って中央が盛り上がり、沢水が入らずに雨水だけで成り立っている高層湿原なんかは、本当に栄養分がないので、こういう所へはミズバショウは入って来れません。
さて、前回のザゼンソウに引き続き、花言葉も調べてみました。
「美しい思い出」
「変わらぬ美しさ」
だそうです。
こういうの、誰が考えてるんですかね。
ミズバショウはともかく、ザゼンソウみたいな地味子にまでいちいち花言葉がついているのには、ちょっと驚きます。




