【No.20】コタツ席あります ザゼンソウ
2月になりました。
暦の上では2月はまだ冬ですが、日は既に長くなって来ています。
早春から活動を始める一部の植物にとっては、2月はもう春の始まり。
これからしばらく、早春に花を咲かせる植物の話を書こうかと思います。
ザゼンソウ(サトイモ科) Symplocarpus renifolius
島根県と山口県の県境あたり、国道187号沿いに「山賊」というレストランがあります。
山道を走っていると、突然、という感じで現れる大きな武家屋敷みたいな店。鶏の山賊焼きとかサーロインステーキなんかが名物で、レジの脇には何故か草餅のフィギュアが山盛りになって売られているという、何だか変な店です。外国人観光客とか連れてくると喜びそうな感じ。料理はなかなか美味しいですよ。
その店、野外の炬燵席があって、これが楽しい。冬に外で炬燵で暖まりながら料理を楽しむのもなかなかいいものです。それで………
「おい、アララギ。」
何?
「何の話をしている。」
あ、ごめん。野外の炬燵席の話がしたかっただけ。
今回のお題のザゼンソウ、実は、炬燵席になってます。
ザゼンソウは、湿原に生えるサトイモ科の多年草で、早春の1~3月頃、葉を出す前に暗褐色の花を咲かせます。ぱっと見の印象は、何というか「闇落ちしたミズバショウ」みたいな感じ。暗褐色のものは花びらではなく「仏炎苞」と呼ばれるサトイモ科独特のもので、葉が変化したもの。中にある「肉穂花序」と呼ばれる穂に、花びらのない小さな花を密生して咲かせます。この姿が、座禅を組む僧の姿のようだというので、この名があります。
ザゼンソウが咲く頃は、湿原はまだ冬のように寒く、昆虫は体が冷えるので活動が困難です。そこで、ザゼンソウは、花を発熱させて昆虫を呼ぶという戦略を思いつきました。発熱するのは外側の仏炎苞ではなく、中の肉穂花序。これに覆いかぶさるように仏炎苞があるので、花の中は暖かくなります。温度を測ると、14~25℃程にもなるそうです。この暖かさで昆虫を誘い、花の中で暖まって花粉まみれになった虫が外に出て活動し、寒くなるとまたザゼンソウの花に立ち寄る、という形で受粉が行われるようです。ちなみに蜜は出ません。
また、花には悪臭があり、これも昆虫を誘引するための手段のようです。ザゼンソウの花は何度か見たことがありますが、なにしろ生えている場所が湿原ですがら、花に近寄ることがほぼ不可能。なので、私はこの悪臭をまだ嗅いだことがありません。どれくらい臭いのかな。
花が終わると、葉が出てきます。葉はこんな感じのハート型。長さが短い分だけミズバショウよりはだいぶ小さい感じに見えます。
<ザゼンソウの葉>
ところで、ザゼンソウにも花言葉があるそうです。
「ひっそりと待つ」
「沈黙の愛」
なんだとか。




