【No.18】雪国育ちは寒さが苦手? ヤブツバキとユキツバキ
ヤブツバキ(ツバキ科) Camellia japonica L.
ユキツバキ(ツバキ科) Camellia rusticana Honda
「東京の冬は寒い。」
以前、北海道出身の人から言われたひとことです。
いや、そんなことないだろ。と思うのですが、よく聞いてみると、外ではなくて、家の中の話。
北海道の人たちは、冬が寒いので、家の中では暖房をガンガン利かせて暖かくして過ごす。ところが、東京では家の中の暖房の温度が低い。これでは寒くて過ごせない、というのです。なるほど、そういう事ね。
植物にも、実は似たような話があります。そのひとつが、今回のヤブツバキとユキツバキの話。
良く知られているように、日本列島は、日本海側と太平洋側で気候が異なり、日本海側は冬に降水量が多く、太平洋側は少ない。そのため、北陸地方や東北の日本海側は、冬に積雪の多い「雪国」となります。この雪国の気候に適応した結果、共通の祖先から分かれて、太平洋側と日本海側で別の種になったと考えられる植物が、日本には多くあります。そのひとつの例が、このヤブツバキとユキツバキです。
写真でわかるとおり、まず花の形が違います。
ヤブツバキは漏斗型。それに対してユキツバキは花びらが平らに開き、サザンカを思わせる花形になります。以前にサザンカの所で書いたように、ヤブツバキは、昆虫の少ない1月頃から咲くので、メジロ等の鳥が花粉を媒介します。そのため、花弁は合着して丈夫な漏斗型になり、雄蕊も束になって鳥の頭に付きやすいようになっています。
一方のユキツバキは、雪に埋もれて越冬するため、花が咲くのは雪が解ける4~5月頃。その頃には羽化して出てくる昆虫も多いので、サザンカと同じように、花は平に開き、雄蕊も束にならず、昆虫による花粉媒介に適した形になっています。
もうひとつの大きな違いは、樹形。
ヤブツバキは、はっきりした幹が立ち上がります。普通、木というとこんな感じ、と誰もが想像するような樹形です。
一方、ユキツバキは、はっきりした幹が立ち上がらず、細い枝が地面を這うような樹形になります。これは、冬の間、雪の中に埋もれて越冬するためです。
雪は、細かい氷の結晶が降り積もったものですから、大量の空気を含んでいます。これは、保温効果を持ちます。また、雪の表面は気温に近い温度まで下がりますが、積雪の中は、地面に近づくほど温度が上がり、地表近くでは0℃付近で安定しています。つまり、雪の中の方が暖かいのです。ユキツバキは、この「雪の布団」にくるまれて冬を越すために、地面を這うような樹形になって、雪の外に出ないようにしているのです。
実際、新潟等のユキツバキの自生地では、雪の外に出た枝は枯れてしまいます。これはユキツバキ以外の常緑低木も同じなので、こうした多雪地では、夏に林床の常緑樹の高さを見れば、その土地の積雪深がおおよそ推測できます。
なお、関東の太平洋側などでユキツバキを育てようとすると、冬に寒さと乾燥で葉を傷めてしまうことが多いそうです。実は寒がりなんですね。
写真のヤブツバキは伊豆の爪木崎、ユキツバキは新潟の関川で撮影したものです。




