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【No.1】笹薮の女王 ショウキラン

私が長年撮り溜めていた野生植物の写真の中から、適当にピックアップして、その種にまつわる思い出などを文章にして、一種ずつ紹介していきます。

蘭鍾馗の、まじめな方のエッセイです。

ショウキラン(ラン科) Yoania japonica Maxim.

挿絵(By みてみん)


まずは、これからいきましょうか。私のPNの元ネタであるショウキラン。漢字で書くと「鍾馗蘭」。鍾馗とは、疫病神を追い払うとされる中国の神様。その兜を被った姿に花が似ているというのですが、正直、どこが似ているのか私にはさっぱり分かりません。


実は、ショウキランの名前を持つ植物は2種類あります。

ひとつは、これから紹介するラン科のショウキラン。濃いピンクの花が咲く葉の無いランです。

もうひとつは、ヒガンバナ科のショウキラン。黄色い花の咲く大柄なヒガンバナです。ヒガンバナ科の方は、ラン科の方と区別するために「ショウキズイセン」と呼ばれることが多いようです。


<ヒガンバナ科のほうのショウキラン>

挿絵(By みてみん)


で、この2種、偶然ですが面白い共通点があります。花の時期に限っては、どちらも葉がありません。


で、ラン科の方のショウキラン、ブナ林の林床の笹藪の中などに生えます。このランは緑の葉を持ちません。土壌中の菌類と共生していて、菌類から必要な栄養をもらって生育するので、自分では光合成を行う必要がないのです。ある日、地面から短い茎を出して、いきなり花だけを咲かせます。


こういう育ち方をする植物のことを「菌寄生植物」と言います。菌寄生植物はラン科には結構多いのですが、大抵は茶色系の地味で小さな花を咲かせます。こういう地味な花を咲かせる種は、殆どが自家受粉で、虫がいなくても結実するのですが、ショウキランの花は、菌寄生植物としては例外的に大きくて派手。花の美しさでは、日本の野生ランの中でも五本の指に入るでしょう。山で見つけると、結構嬉しくなります。香りもあります。これだけの投資をして虫を呼ぼうとする以上、恐らく他家受粉だと思われます。


私が初めてこの花を見たのは、新潟県某所の砂防の現場でした。林床を覆うチシマザサの根元で、ピンクの大きな花が輝くように咲いていました。すごい存在感だったのを覚えています。笹藪の女王、という言葉が浮かびました。

この花、生えている所には割と集中的に生えていて、一本見つけると、その周囲で何本も見つかることが多いものです。


ところで、最近、ショウキランの果実をカマドウマが食べて種子散布するということが分かってきました。なんでまた羽の無い昆虫をわざわざ散布者に選んだのか不思議ですが、狭い範囲に集中的に生えていることが多いのは、カマドウマの行動圏が狭いせいかも知れないな、と思ったりします。






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