【No.16】頼りすぎは良くない ヤドリギ
ヤドリギ(ビャクダン科) Viscum album L. subsp. coloratum Kom.
ヤドリギです。
大きなエノキなんかに寄生する低木です。
昔はヤドリギ科でしたが、新しい分類ではビャクダン科に分類されます。このビャクダン科の植物は、実はすべて他の植物に寄生する寄生植物なのです。
常緑で、きれいな丸い樹形になるので、冬になって宿主の葉が落ちてしまうと、遠くからでも丸い形のヤドリギが良く目立ちます。
ヤドリギは、冬になると、半透明の黄色い丸い実をつけます。これが、他に食べられる実が少ない季節に成るので、鳥には人気があるらしく、良く鳥が食べに来ます。
ところが、この実はほとんど消化されないらしく、果肉そのまま、という感じの黄色い半透明のねばっこい糞が、鳥のお尻から糸を引いて出てきます。で、これが新しい木の枝にくっついて、そこからまたヤドリギが生えてくるわけです。まあ、ヤドリギの戦略にまんまと引っかかって、鳥は種子の運び屋にされているということですよね。
ヤドリギは、ヨーロッパではクリスマスの飾りに使われますが、あれはセイヨウヤドリギという近縁種で、日本のものと違って赤い実が成ります。冬でも青々とした葉を茂らせるので、昔の人は、この木に何か魔力のようなものを感じて、魔除けとして使われたのだそうです。
でも、ヤドリギは寄生植物。必要な水や栄養分は宿主の木から得られるのですから、冬もわざわざ緑の葉をつける必要がないような気もします。いや、いっそ葉なんか全然出さなくてもいいのでは、とも思えるのですが。
ヤドリギは、1本の木に幾つもつくことが良くありますが、ヤドリギのせいで宿主の木が枯れることはないのだそうです。言われてみれば、私も「ヤドリギが付きすぎて枯れた木」というものは見たことがありません。まあ、あまりたくさん付くと弱りはするでしょうが。
つまり、ヤドリギとしては、栄養分はもらうけれども、やりすぎて宿主の木が枯れてしまっては元も子もないので、その辺は少し手加減をして、宿主の葉が落ちる冬の間もがんばって光合成をして、過度な負担を掛けないようにしているのかも知れません。
自然の中で生き残るためには、そういう手加減も必要なのでしょう。いい人だからと言ってあまり頼りすぎては良くない、ということですね。
写真のヤドリギは、栃木県で撮影したものです。逆光になってしまったのですが、実が日の光で輝いて、却ってきれいな写真になりました。




