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あてどない植物記  作者: 蘭鍾馗


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19/95

【No.16】頼りすぎは良くない ヤドリギ

ヤドリギ(ビャクダン科) Viscum album L. subsp. coloratum Kom.

挿絵(By みてみん)


 ヤドリギです。


 大きなエノキなんかに寄生する低木です。

 昔はヤドリギ科でしたが、新しい分類ではビャクダン科に分類されます。このビャクダン科の植物は、実はすべて他の植物に寄生する寄生植物なのです。


 常緑で、きれいな丸い樹形になるので、冬になって宿主の葉が落ちてしまうと、遠くからでも丸い形のヤドリギが良く目立ちます。


 ヤドリギは、冬になると、半透明の黄色い丸い実をつけます。これが、他に食べられる実が少ない季節に成るので、鳥には人気があるらしく、良く鳥が食べに来ます。

 ところが、この実はほとんど消化されないらしく、果肉そのまま、という感じの黄色い半透明のねばっこい糞が、鳥のお尻から糸を引いて出てきます。で、これが新しい木の枝にくっついて、そこからまたヤドリギが生えてくるわけです。まあ、ヤドリギの戦略にまんまと引っかかって、鳥は種子の運び屋にされているということですよね。


 ヤドリギは、ヨーロッパではクリスマスの飾りに使われますが、あれはセイヨウヤドリギという近縁種で、日本のものと違って赤い実が成ります。冬でも青々とした葉を茂らせるので、昔の人は、この木に何か魔力のようなものを感じて、魔除けとして使われたのだそうです。


 でも、ヤドリギは寄生植物。必要な水や栄養分は宿主しゅくしゅの木から得られるのですから、冬もわざわざ緑の葉をつける必要がないような気もします。いや、いっそ葉なんか全然出さなくてもいいのでは、とも思えるのですが。


 ヤドリギは、1本の木に幾つもつくことが良くありますが、ヤドリギのせいで宿主しゅくしゅの木が枯れることはないのだそうです。言われてみれば、私も「ヤドリギが付きすぎて枯れた木」というものは見たことがありません。まあ、あまりたくさん付くと弱りはするでしょうが。


 つまり、ヤドリギとしては、栄養分はもらうけれども、やりすぎて宿主しゅくしゅの木が枯れてしまっては元も子もないので、その辺は少し手加減をして、宿主しゅくしゅの葉が落ちる冬の間もがんばって光合成をして、過度な負担を掛けないようにしているのかも知れません。

 自然の中で生き残るためには、そういう手加減も必要なのでしょう。いい人だからと言ってあまり頼りすぎては良くない、ということですね。


 写真のヤドリギは、栃木県で撮影したものです。逆光になってしまったのですが、実が日の光で輝いて、却ってきれいな写真になりました。





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